スマイルの美の基準と傾いたスマイルの治療

渡ったときに片方の歯茎だけが見えるカント

スマイルの美しさの基準

魅力的で美しいスマイルはアメリカのオバマ大統領のように選挙に勝利する確立を上げますし、ビジネスにおいては商品を売りその会社の売り上げを向上させる確率を高めます。現在の社会情勢を考えるとこのような人間本来持っている感情に訴える力を引き出して売り上げや成功を達成する手段は男性も女性も今まで以上に重要となってきています。

スマイルトレーニング

一般に目標とする好感度の高いスマイルの見え方があります。スマイルはスモール・ミディアム・ラージの3つに分類されますが、笑顔を判断するときにはミディアムスマイルで判断します。スモールはいわゆる「微笑み」のことです。一方、ラージは大笑い、爆笑時の笑顔です。それらの中間であるミディアムスマイルをした時、上の歯並びに沿って下の唇が沿っているととてもキレイな笑顔に見えます。上の歯がスマイル時に見えると明るい印象がありますし、下の歯を見せて笑うと少し狡猾だったり年を取っている印象になります。人間歳を取ると顔にもたるみが出てきますのでスマイルをするときに上の歯が上唇に隠れて段々見えなくなって、下の歯が見えるようになってきます。普段から意識してスマイルしていると表情筋の老化が抑えられ、同じ年代の人よりも若く見えます。ミディアムスマイルでも歯茎が2mm程度見えている分には問題ないのですが、それ以上歯茎が見えるようですと、本人が気にするようになってきます。このような状態を専門用語でガミー(歯茎の)スマイルといいますが、口唇が短かったり、上の顎の骨が発達しすぎている、または歯茎の歯肉が長いために歯茎が見えすぎてしまうのです。このスマイルラインが女性では緩やかな弧を描くほど女性的な魅力が高まり、水平でまっすぐになるほど男性的な印象になります。

歯茎の高さ

スマイル時の美の基準はこのHPでいくつか紹介しましたが、そのほかの基準を今回は紹介したいと思います。まず歯茎の高さの基準にについて見てみましょう。スマイルを診断するときはSocial Smileとも呼ばれるミディアムスマイルで判断します。理想的には右図のように2番目の前歯(側切歯)が少し小さくなっているのが理想です。歯茎の見え方に関しては、加齢でも歯茎の露出度が減ってきますのでどれだけ露出していればいいかということは一概に言えませんが、スマイル時に2mmを超えない程度で歯茎が見えていればそれだけ若々しさを表現できるといえるでしょう。それ以上露出しても問題が出てきますので。

口角の影(バッカルコリダー)

次にスマイルの美の基準でよく知られているバッカルコリダーについてです。バッカルコリダーとはミディアムスマイルのときに歯列と口角の間にできる空間です。この空間を少なくすることでより美しいスマイルが達成されます。この空間はスマイル時の第一小臼歯と口角で作られる三角形の空間ですが、これを少なくするには臼歯部は広く拡大されていなくてはなりません。ここでも臼歯部の拡大効果が高いLF2システムが威力を発揮します。LF2では抜歯することが少なくなりますので歯列は広くなりバッカルコリダーは少なくなりスマイルもグッドになる傾向が強いです。

 

前歯一本一本の大きさのバランス

ミディアムスマイル時には上の前歯が見えますが、その前歯6本の比率が黄金比になることでより美しくなります。歯自体の大きさも大事ですが、まず歯列の形が適切である必要があるのです。つまり、歯列の形があまりに四角すぎても三角すぎても黄金比を達成することができないのです。右図の真ん中のかまぼこ型がもっとも前歯の黄金比を表現できます。矯正歯科医のなかには患者さんの最初の歯列形態に合わせたワイヤーを最後まで用いて仕上げるべきだという流派がありますがスマイルの美の基準のことを考えていませんので私のところでは採用していません。

歯並びの対称性(水平かどうか)

もうひとつスマイルの美の基準としてあげるのは、スマイル時の歯並びの傾きです。この傾きのことをカントといいますが、カントが左右どちらかに傾いていると対象性が失われますので、程度がひどい場合は考慮に入れなければならないでしょう。カント修正には従来は外科手術とされましたが、当院でもミニインプラントによって骨きり手術を避けることが可能になっています。ミニインプラントは局所麻酔で施術が可能であり骨を切ったり貼ったりという大きな移動を伴わない手軽な施術であることが特徴です。右の図では右側が垂れ下がってみぎがわの歯茎だけが見えているのでカント修正が必要になるスマイルです。

左が下がって傾いている歯並び(カント)の実際の症例~カント修正~

顎の歪みでお悩みの患者さんはその原因が上あごから歪んでいる方と下顎だけ歪んでいる方に分けられます。このような方は従来は顎の骨を切る外科手術でないと治せませんでした。現在は矯正用インプラントアンカーという小さなネジを用いる、あるいは咀嚼筋、表情筋の新たな習慣づけによる筋・骨の適応と変化を図る生理的な治療を駆使することでこのような歪みも矯正治療のみで改善することもできます。ではそのようなお悩みを持った方の治療例を一緒に見ていきましょう。顎の歪みと傾いたスマイル(カント)を主訴に来院されました。アンカースクリューによる奥歯の圧下とスマイルトレーニング、顎関節周囲の神経・筋の適応を用いた非外科の矯正治療で改善しました。

術前(ビフォー)

まず顔貌の評価です。口角が左下がりで顎が右へ曲がっているため顎のラインの左右差が認められました。スマイル時には左側の歯茎だけが見えており上あごから傾いているのがわかります。口腔内は正面から見ると左下がりに傾いていることがわかります。また、右から撮った写真と左から撮った写真を比べると明らかに左の歯茎が多く露出しているのが分かります。

ミニスクリュー(インプラントアンカー)という小さなチタン製のネジを用いて非外科の通常の矯正治療のみで右側の歯列を圧下(めり込ませ)して顎の移動とスマイル、顔貌の左右対称性を改善しました。

術後(アフター)

治療後の顔立ちは正面から見ると顎のラインや口唇の左右対称性が改善されていることが分かります。また、スマイル時に見えていた左側の歯茎も右側と同じ高さにまで圧下したため右側同様、笑っても見えなくなっています。口腔内も正面、左右すべての面で左右対称性が改善されています。特に左側の歯を圧下したため歯茎が短く改善されたことが分かります。咬み合わせも当然治っており1級正常咬合になっています。

矯正治療のリスクについて ※費用について

前歯の見え方と魅力の関係

魅力的な顔と平均的な顔では前歯の見え方の違いでスマイルに対する影響が違ってきます(魅力的な顔と平均的な顔について)。2011年10月号AJODOの論文によると、魅力的な顔を持つモデルでは

  1. 女性のモデルではスマイルラインのカーブがより大きいほうがその顔立ちを引き立たせるが、男性についてはあまりカーブが強調されないほうがより魅力的
  2. 性別に関係なく歯茎の露出が大きい方が魅力的
  3. 上顎の歯の正中が顔の正中に対して少しずれると魅力が下がる

と述べられています。

この論文では平均的な顔立ちのモデルと異なり魅力的な顔立ちのモデルに対する矯正治療デザインの工夫が述べられています。もし、そのような患者さんが来院されたときには考慮に入れておくべき細部の工夫だと思います。

スマイルラインのカーブを強調すると女性っぽくなる

スマイルラインは強調されるとより女性的な印象を与えますので平均的な顔より女性的特長が強調された顔であればスマイルラインが強調されても調和しそうです。これとはまったく逆に、男性的な魅力を持った顔であればではスマイルラインを平均より少し平坦化したほうがより男性的な魅力を高めると思います。

スマイル時の歯茎の露出度によって若さが表現できますが、2mmを超えない範囲にして露出し過ぎないようにしたほうが良いと思います。2mmを超えてくると今度はガミースマイルと呼ばれる歯茎が見えすぎることによる弊害が出てきますので。

正中について

魅力的な顔立ちのモデルでは顔面正中に対する歯の正中がずれると魅力に影響しやすいとのことですが、矯正治療では歯の大きさや奥歯の位置の左右差があるとその程度に応じてズレてきます。これを補正するために顎間ゴムをかけたり歯の大きさを左右対称にしたりする処置が必要なこともあります。ただ、多くの場合大きな正中のズレがない限り問題となりにくいです。

口唇の審美性の基準

一般的な指針として、口唇が安静時に4mm以上開いていると美しくありません。ただし、口唇の厚みがふっくらとしている人の場合には薄い口唇の人よりも多少前歯が前に出ていても美しく見えます。上側の口唇の厚みは8mm程度、下の口唇は10mm程度の厚みがあると美しく見えます。 

鼻が高いあるいはオトガイが発達している人への配慮

鼻が高かったり、顎の先(オトガイ)が発達している人では、顔のバランスの観点から、歯を抜かずに矯正治療をしたほうが口唇と鼻、オトガイの関係が美しくなることが多いです。   逆に、鼻が低かったり、オトガイが発達していない、または下唇~オトガイにかけて平坦なラインの人は抜歯矯正をしたほうが顔のラインが整うことが多いです。  

オトガイのシワはなぜできるの?

また前歯が前に出てしまっていて口を閉じるため、がんばって口唇を閉じなければならない場合、顎に梅干し皺ができます。この顎の梅干しシワは写真を撮るときに本人が気づくことが多いです。このような顎の梅干し皺ができる場合、一般的に歯は前に出すぎています。この場合、前歯を後ろに引っ込めることで、口が閉じ易くなり、口唇の緊張も解消します。

口唇の加齢変化

顔は加齢とともにのっぺりとした平坦な顔になり、口唇はふくらみが無くなっていく傾向があります。この老化に伴う顔の変化を考えないで、口唇の薄い患者さんを抜歯して矯正治療すると、年齢よりも老けて見えることがあります。

口唇が薄い方への配慮

前歯を引っ込めすぎるとこれもまた問題で、口唇が薄くなります。口唇が薄い人の顔立ちは顔面の中ほどがへっこんでいるため、あまり整っていないことが多いです。そのような方は非抜歯矯正治療でやや前歯を前に出してあげてもっと赤唇がみえるように口唇をふっくらとさせるほうが魅力的な顔立ちとなります。  

唇の厚みを考慮した矯正診断

唇の赤い部分(赤唇部)が厚いまたは薄い方は原因に応じて、上下の赤唇部の厚みのバランスを考慮して矯正を行わなければならないこともあります。

赤唇が厚く見える原因

  1. 唇自体に厚みがある。
  2. 前歯が前に傾斜している。
  3. 口呼吸をしている。

このうち唇自体の厚みは矯正治療では変えにくいのですが、前歯の前方傾斜で赤唇部が厚く見える場合や口呼吸による原因は矯正歯科治療で改善することができます。

矯正治療での口唇の審美性への対応について

前歯や歯槽骨が傾斜していると前歯が唇を前に押し出すため正面から見ると赤唇部がめくれその分厚く見えます。前歯の前突が顕著な場合には小臼歯の抜歯が必要になるかもしれません。抜歯スペース(7mm程度)を前突している前歯の後退に使うことで最大の改善効果が得られるます。

口呼吸で口を開いている場合には通常閉じていると見えない面が見えてきますので唇が厚く見えます。口呼吸は舌の位置が正常ではなく口腔周囲の筋肉のバランスも異常になるため唇のバランスだけでなく歯並びや顔立ちにも影響を及ぼします。習慣的に口呼吸している方は舌の位置、鼻づまり、咬む習慣の有無、出っ歯や開咬、顔が長めであるなどさまざまな口呼吸の原因に応じて改善を図ります。

上下赤唇の厚みのバランス

個人差はありますが赤唇部の厚みの基準は上が7mm程度、下が9mm程度が目安です。上よりも下の赤唇部が2mm程度厚くなっていると上下のバランスが取れた唇に見えます。

参考文献

  1. Orthodonntics Current Principles and Techniques 5th edition, Graber, Vanarsdall, Vig 2010 ELSEVIER
  2. Smile esthetics from patients’ perspectives for faces of varying attractiveness Chan A. Chang, Henry W. Fields Jr., Frank Michael Beck, Nathan C. Springer, Allen R. Firestone, Stephen Rosenstiel, James C. Christensen Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2011 Oct;140(4):e171-80. 

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