重度の受け口の非外科矯正歯科治療

受け口の非外科矯正治療

受け口とは

受け口とは一般に下顎の前歯が上顎の前歯よりも前にある咬み合わせのことです。この受け口は日本人に多く矯正歯科医院でも多くやる治療のひとつです。受け口の歯並びは咬み合わせが反対というだけでなく、叢生があったり上顎の歯列の幅が狭くなっていることもよくあります。歯並びの状態は顔立ちにも反映されますので受け口の方は多かれ少なかれしゃくれた顔立ちになってきます。また、ほとんどの受け口の患者さんの舌位は口蓋に上がっておらずいわゆる低位舌となっています。

受け口の原因

受け口などの顎の形は遺伝だからとあきらめている方が多いですが、遺伝要因よりも悪い癖や習慣などからくる後天的な要因のほうが強いのです。受け口の原因は2割程度が遺伝要因であとは低位舌、口呼吸など後天的な要因で受け口になります。

この後天的な要因には悪い癖、例えば鼻が詰まっているなどの原因から口呼吸になり舌の位置が下に落ち込むと舌根部が気道を圧迫しますので気道が狭くなります。そのため自然と下顎を前に出して呼吸し、これが続くと下顎が日常的に前方に位置するため受け口になります。このように生活習慣や癖などで弱い力が続くと筋肉や骨はそれに調和するように変化してきます。このことはなにも子供に限ったことではなく大人でも同じく筋と骨に変化が起きてきます。

 

外科矯正と非外科の矯正治療

外科矯正とは上顎と下顎(または下顎のみ)の骨を削って顎の骨を分割し、上下で咬み合うよう顎の骨を移動させて治す治療です。外科矯正は短期で顔を大きく変えられることが非常に魅力的です。ただ、外科矯正は神経麻痺は良く起こりますし、全身麻酔下で行いますので麻酔医がちゃんと付いてないと命にかかわります。さらに頭蓋骨もモデルを使い具体的にどのように骨切りを行うかを実際に説明されると、なるべくなら手術を避けたがる人の方が多いです。

実は外科矯正ほど大きく顔を変えることはできなくとも通常の矯正歯科治療で反対咬合を治すことができます。ですが、反対咬合を外科手術に頼らないで治療することは最近まで難しかったのです。理由を一言で言うと矯正歯科の伝統的な概念には、筋肉の力にも似た優しい矯正力が骨を作ったり変えていくという概念が不足していたからです。そのため軽度の反対咬合でも骨切り手術で治していました。

外科手術ほど大きく顔を変えなくとも平均顔に近づけ、もともと持っている自然な自分の顔を生かした非外科の矯正治療法があることを多くの患者さんは知らされていません。治療者側に最新の技術と豊富な医学知識がなければ、重度の反対咬合が手術しない矯正歯科治療でなぜ治るのか患者さんに説明できません。

歯を削って治すクイック矯正とは?

受け口の矯正で見かけるのが前歯を削ったり抜歯を行い差し歯で前歯の状態だけを改善する’クイック矯正’と呼ばれる審美歯科での治療です。クイック矯正と呼ばれるものは矯正歯科治療とは全く異なる治療で、歯を削ってセラミックやジルコニアの人工歯を入れます。歯根の位置が変わらないのに歯だけセラミックの差し歯に変えると横から見たときに「くの字」に曲がり特に歯茎がおかしな形になります。歯だけではありませんが人間の体はうまくできています。歯根を動かさず歯だけを削って治すような無理な形の差し歯は力学的に弱く将来作り直しになるリスクが高いものです。また、矯正歯科治療では歯根とともに歯槽骨や歯茎も動かせるため自然と歯茎の高さも揃うのですが、クイック矯正で削って歯だけ差し歯にすると10年前の芸能人の前歯のように一見歯並びはきれいだけど歯茎のラインがそろっておらず残念なスマイルになっている方を見ることがあります。

重度の受け口を矯正治療のみで治療した症例

下の重度の受け口の症例写真は30代の女性で大学病院では手術しかないので無理に治療を始めないほうがいいと言われた方です。実際の治療は親知らずだけ抜歯してあとは非外科での矯正治療を行いました。

術前(ビフォー)

治療前の写真では下あごの突出感があり、笑ったスマイル時にも主に下の前歯が見えています。正面から見ても下唇が前方へ出ている感じがわかります。また、咬み合わせも完全に受け口の咬み合わせです。

術後(アフター)

治療後の写真では正面から見ると上唇のあたりがふっくらと厚みが出て下唇が引っ込み上下の唇の関係が改善され受け口っぽさが軽減され、下あごもやや引っ込みしゃくれ感が改善しています。スマイルも上の前歯が見えるようになったため好感度が増しています。咬み合わせは正常一級咬合になっているのがわかります。このように重度の受け口でも高度な治療技術を駆使することで矯正を行うと非外科で骨を適応させ顎の位置を変え顔立ちやスマイルを整えることができることがわかります。

動画でもご覧いただくこともできます。

【本症例の概要と治療法、リスク、料金、期間について】
症例の概要と治療法:受け口を主訴に来院。非抜歯、表側矯正装置で治療を行った。噛み合わせはClassⅢ(下が前にある咬合)、唇の上下関係も下唇が前方にある。面長で低位舌が認められた。非抜歯、表側矯正、LF2、マッスルウィンズ法で下顎臼歯を圧下しながら歯槽骨ごと弱い力で生理的に矯正した結果ClassⅠ咬合を獲得し唇の上下関係も改善した。
矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置によっては発音に影響が出る、食事に制限が入る等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくはhttps://facetalk.jp/treatment-costs/
期間:2年程度

矯正治療のリスクについて ※費用について

【補足】顎変形症の保険治療について

私はこのように矯正歯科治療だけで治せる技術があるため、どうしても自分の顔が嫌で顔を大きく変えたい人しか外科矯正をしませんが顎の骨切りを伴う外科矯正についてもう少し詳しく書いておきたいと思います。、日本では顎が大きく左右にゆがんでいたり、顎が出すぎたりして咬み合わせもズレている人を『顎変形症』と診断します。もし矯正歯科医から顎変形症と診断されたら顎の骨を切る外科手術を伴う矯正治療を保険で行うことが可能です。

顎変形症に使える矯正装置の種類

保険で行う場合は『術前矯正』と言って手術の前に行う矯正治療からスタートします。これは手術の前に顎がゆがんでいる方向によりひどくなる状態に歯を動かして手術に備える期間で通常の矯正治療と同様、2年程度かかります。例えば受け口の方の術前矯正ではより受け口がひどくなる方向に動かします。顎変形治療中は歯にワイヤーと装置(ブラケット)がついていて、術前矯正が終わり次第、手術、術後矯正(1年程度)という治療の流れになります。

この顎変形症の保険治療では使える矯正装置が決まっていて表側の装置のみ使用が可能です。裏側矯正は保険の適応ではないのでもし顎変形症で裏側矯正で治療をしたい場合には通常の矯正治療と同じ自費治療でやることになります。

次に述べますが保険が効かない外科矯正を希望された場合は矯正治療料金の他に外科手術料金も加算されますのでクリニックや病院にもよりますが大体矯正治療料金の2倍以上かかります。そのくらいの料金を支払っても裏側矯正で顎変形症の治療を行いたいという患者さんもおりますので料金と自分の求める治療が釣り合っているかどうか今一度考えてみてください。

裏側矯正で顎変形症の手術を受けたい場合

もし、顎変形症の治療を裏側矯正でやりたいとなった場合は保険の術式以外にも治療の選択肢が増えます。たとえばサージェリーファースト(surgery first)と言って外科手術を先に行いその後矯正治療で噛み合わせと歯並びを整えていくという方法があります。サージェリーファーストの良い点は術前矯正がほとんどいらないため期間が短縮される、顔貌が先に改善されてモチベーションが上がる、術後矯正も筋肉の付き方が変わるため動かしやすいことがあります。

サージェーリーファーストが可能になった背景には骨を切った後に固定しておく器具(チタンプレート)が浸透し術後の安定性が増したためです。昔は『囲繞結紮』といってワイヤーでくくって止める方法がメインでしたので術後の安定性が悪く術前矯正で噛み合わせを整えてから手術するほうがうまくいっていたのです。

当院でも顎変形症で裏側矯正をしたい方はサージェリーファーストで治療を行っています。顎変形症の治療は矯正歯科医と形成外科医あるいは口腔外科医の知識、美的センス、そしてなにより治療技術に大きく左右されるため信用できる形成外科医と組んでサージェリーファーストを行っています。

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