成人でも骨から拡大できるアンカースクリューを使った急速拡大装置について

急速拡大装置(スクリュータイプ)_sig

拡大装置の分類

矯正治療で使われる拡大装置にはゆっくり歯だけを広げるタイプと2週間程度で一気に上顎骨から広げる2種類があります。ゆっくり広げるタイプは緩徐拡大装置といって取り外し式の拡大床や左右の臼歯を太めの針金でつないで広げる固定式のWタイプ拡大装置などがあります。歯だけしか動かせないので軽度の歯列の狭窄(狭い)に使います。

一方、急速拡大装置は朝晩自分で万力のようなエキスパンダーをまわして2週間程度で骨ごと真ん中から割って広げる装置です。口蓋は左右から骨が癒合してできていますが、従来の急速拡大装置では18歳くらいまでなら上顎の骨が真ん中から割って広げることができましたが、成人では癒合が進み割ることが難しく骨から拡大することが外科手術以外では不可能だったのです。急速拡大装置で骨から広げる方法は大きく拡大できるため重度の歯列狭窄に使用します。また、いびきで悩んでいる患者さんにも使います。歯列の幅を広げると舌が収まるスペースを広く確保することで気道に余裕を持たせることができ、いびき対策になるためです。

新しい急速拡大装置の登場

急速拡大装置(スクリュータイプ)_sig

従来の急速拡大の欠点である成人では口蓋正中の癒合が進んでいるため上顎の骨を割って広げることができないという欠点を解消する新しい急速拡大法が矯正歯科治療で使用されるようになってきています。この新しい急速拡大法は装置を歯に固定するのではなく歯科矯正用アンカースクリューで装置を左右の上顎の骨に固定してエキスパンダーで広げていく方法でMSE (Maxillary Skeletal Expander)と呼ばれています。

急速拡大で骨から広げた後は、真ん中の割ったところに骨が再生してくるまでの治癒期間が必要で、通常は3か月~6か月程度固定したままにしておきます。

MSEによる急速拡大は臼歯部も拡大される

従来の急速拡大装置は臼歯部があまり広がらず前歯に近いほど広がる傾向がありV字状に拡大されます。これは口蓋の後方には翼突口蓋縫合という翼状突起と口蓋が癒合しているるために急速拡大で口蓋を割る際に大きな抵抗となるためです。一方、歯科矯正用アンカースクリューで口蓋骨に留めて急速拡大するMSEではこの翼突口蓋縫合の一部を割ることができるため臼歯部も前歯部も同じ程度に平行に拡大されます。ですので特に臼歯部を広げる必要がある場合には従来の急速拡大装置より有利な方法と考えられます。

いびき治療への応用

最近この装置があってよかったなと感じているのは『いびき』をかく成人患者さんに使用してあげることができるようになったことです。いびきで睡眠が浅くなり次の日も疲れが取れない頭がはっきりさえないという睡眠時無呼吸症候群のような症状が起こりますのでこの装置の併用で舌が収まるスペースを広げ気道を確保することができます。そのほかにも従来の装置で歯だけ拡大すると顔が伸びてしまう患者さんや重度の上顎歯列狭窄の患者さんにも気軽に使用できるようになり私の治療の幅もさらに広がりました。

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