インビザライン(アライナー型矯正装置)による矯正治療について

インビザライン装置_1

まっすぐに並んだきれいな歯で笑うことはどの社会でも好感度が高く評価されます。よい歯並びは社会的なアドバンテージを与えるだけでなく、歯や口腔の健康にもプラスの効果があります。歯並びのお悩みを矯正するにあたって、ブラケット(歯に着ける矯正装置)やワイヤーをつけて矯正治療することもできますが、ブラケットの不快感や見た目の問題から歯にブラケットやワイヤーを付けることを避けてを治したいという方もいます。そのような方が検討する方法のひとつにインビザラインがあります(アライナー型矯正装置 以下インビザライン)。インビザラインはワイヤーとブラケットを使用しないで歯並びの矯正をするマウスピース矯正装置のひとつですが、歯型にあわせて作った透明なプラスチックの薄い板(アライナー)を自宅で自分で正しい順序で付け外して少しずつ歯を動かしていく方法です。

インビザライン・アライナー上下

インビザラインは基本的に昔から存在しているマウスピース矯正の性質を持っていますが、違いは近年のCAD/CAMを応用してシュミレーションに基づいて少しずつ歯を動かすよう設計されたマウスピース(アライナー)を何枚も作って治す矯正技術です。インビザラインによって歯に装置をつけてワイヤーで治していく矯正法以外の選択肢ができたのです。

インビザライン・アライナー一式

ただし、インビザラインを考えている方は、良い面だけでなく不利な面も明確に知っておく必要があります。以下にインビザラインについて詳しく解説していきますので、良く理解したうえでインビザラインのようなマウスピース型の矯正装置で治療されることを強くお勧めします。

インビザラインとワイヤー矯正の違い

インビザラインやマウスピースを使った矯正治療ですべての患者さんのお悩みを治すことができるわけではありません。例えば、インビザラインは歯の移動が主に傾斜移動(歯が倒れるように移動すること)で動きますので、インビザライン専門などをしている他院で抜歯インビザラインをした結果、口元を後退させたいと思っても歯茎が前に残り歯だけが倒れるため人中が伸び口ゴボが治ったと感じない患者さんの再治療希望の患者さんを当院では多くみきております。つまり、歯茎から後退させ口元を大きく下げたい口ゴボの治療には不適切なだけでなく、患者さんの好みの口元の後退量をコントロールすることが出来ませんので口ゴボが残って再治療をするリスクがあることは注意してください。再治療となるとすでに抜歯スペースが残っておらず治療に制限が出ることをご理解ください。さらに、前後左右に顎がずれていたり過蓋咬合やガミースマイルなどでも重度の不正咬合では従来通りワイヤーとブラケット、必要であれば歯科矯正用アンカースクリューを併用して治療する必要があります。この基本的な診断を誤るとアライナーの枚数が増え、治療の経過とともに実際の歯の動きが徐々にシミュレーションからずれていくため再シミュレーション(クリンチェック)を何回も行い、新しいアライナーを追加注文しなければならないことになります。つまりインビザラインやマウスピース矯正は顎が偏位しておらず軽度~中程度の叢生や八重歯など歯根の平行移動があまり必要でない歯並びだけを直したい患者さんにだけ適応となる矯正治療法です。

インビザラインで抜歯矯正が可能かどうかはどうやって判定する?

インビザラインやマウスピースで矯正治療を行う場合は、例外を除いて非抜歯矯正になります。ただし、例外として抜歯矯正が可能な場合があり、それは歯根の平行移動があまり必要ない場合です。例えば、八重歯の患者さんで小臼歯の抜歯スペースにそのまますっぽりと収まる場合や、稀ですが出っ歯の患者さんで滑り台ののように前に傾斜しているタイプで、特に犬歯の歯根先端がかなり奥歯の方にある場合は前歯を倒すことで改善することがあります。この基本的なインビザラインの適応症を誤り抜歯矯正をしてしまうと歯が傾きすぎて歯茎が前に残り人中が伸びたり、抜歯スペースが閉じない、あるいは奥歯が傾斜して咬めなくなったなどさまざまな問題が起こります。

矯正治療は誰が行うのかはよく考えて欲しい

インビザラインやマウスピース矯正装置を作るのは企業ですので、装置を売るために本来無理な症例でも一応はどう動くかのシミュレーションを送ってきます。なので、矯正歯科の教育がされていない一般歯科医や口腔外科医が矯正治療に手を出すのですが、たとえ会社が治療できますよとシミュレーションを送ってきても適応範囲を超えている場合には、ワイヤー矯正よりもかなり治療期間が長くなる、抜歯して歯を平行移動させるために結局はワイヤーを使うことになるなどを患者さんに事前に伝えるべきです。この平行移動による前歯の後退がインビザラインや未熟な矯正専門医では難しいため、外科手術を併用しセットバック手術で前歯を下げてから術後矯正でインビザラインを行うという治療プランもありますが、入院が必要ですし、麻痺や鼻の変形など外科矯正に伴うリスクもあります。セットバックだけでなく両顎手術などの外科矯正に関してもっと詳しく知りたい方はこの記事を参考にしてください。

インビザラインが適応でない場合は?

もし、インビザラインが適応でないと矯正歯科医に言われた場合、セラミックの装置や白いワイヤー、リンガルブラケット(裏側矯正)での治療があります。裏側矯正装置でも技術革新が起きており、ロボットがワイヤーを曲げ、装置を患者さん個人の歯の裏面に合わせてオーダーメイドで作成されるため、かなり薄い裏側矯正装置を作ることができます。当院では3Dデジタル技術を応用した”WINシステム”を主に採用しています

インビザライン(アライナー型矯正装置)のリスク

自分で装置を交換せねばならず面倒なこと

インビザラインなどの自分で取り外ししながら治していくマウスピースタイプの矯正治療はブラケットをつけて直す矯正治療と比べて非常に面倒な治療になります。食事のときや歯磨きのときには毎回アライナーを取り外してケースの中に紛失したり割れたりしないように保護しなければなりません。食事の後は歯磨きとともにアライナーも洗浄した後、自分で再度はめなければなりません。矯正治療で歯がもっとも動きやすいのは、適切な力が24時間持続的にかかっている状態なのですが、インビザラインの場合、アライナーを外している時間が長ければ長いほど歯が動くのが遅くなります。さらに、取り外した後にアライナーをはめる際、正しくはまっていないリスクが常にあります。ですのでもし自分が少しでも怠け者だなと感じている方はインビザラインなどのマウスピース矯正はやめておくことをお勧めします。代わりにワイヤーの矯正治療は取り外しが必要なく寝ていても自動で動かしてくれますしインビザラインより圧倒的に早く治ります。

虫歯のリスク

口腔内の衛生状態を適切に保つことはインビザライン矯正治療の場合、特に大切になります。食事をした後は必ずアライナーを洗い、歯磨きをしてプラークや食物の残りを取り除き歯を清潔に保ってください。ちまたではインビザラインやマウスピース矯正が虫歯になりにくいといった誤解があるようです。確かにインビザラインやマウスピース矯正は取り外しができる分歯磨きはしやすいですが、唾液がアライナーに遮られ歯や歯茎に循環しないので虫歯のリスクが高まることにも注意してください。唾液はただの水ではなく免疫機能をもっていますので唾液の循環がなくなると虫歯や歯周病のリスクが高まります。

アライナーを付けたままポカリスエットなどの清涼飲料水やエナジードリンクといった砂糖(ブドウ糖果糖)たっぷりのジュースを飲むと歯が砂糖水のプールに浸かっている状態になりますので虫歯のリスクが上がってしまいます。ジュースを飲むときはその都度外して飲み終わったら歯磨きをしてすぐに再装着してください。矯正歯科医のところにチェックアップに定期的に来院した際も、治療の進み具合とともに歯のクリーニングをしてもらいましょう。

インビザラインは歯に何もつけないという誤解

インビザラインなどのマウスピース矯正は前述したように、ワイヤーを使った矯正と異なり歯を平行に動かすことが今だに難しい治療法です。ですので、インビザラン治療では、歯の表面にアタッチメントというプラスチックのブロックを接着して少しでも歯根から動かしたいと工夫します(実際はアタッチメント程度では歯の平行移動は難しく主に傾斜移動がメイン)。ところが、インビザラインの患者さんは歯に何もつけたくない患者さんもおり、歯の表面にプラスチックの塊がついていると違和感だけでなく、見た目まで気にする方もいることを知っておいてください。

インビザラインは普通の歯医者さんで受けていいの?

一般歯科医院と矯正歯科専門医院

先ほども述べたように、インビザラインやマウスピース型の矯正装置を売る企業の売り込みが過熱しており、現在では多くの一般歯科医院がマウスピース矯正やインビザラインによる矯正治療を行っています。もし、矯正歯科の専門技術があるほうがお好みなら矯正専門医院で見てもらうのが良いでしょう。矯正歯科医は診断の正確性も一般歯科医や口腔外科医よりは高いですし細かいディーテイルを調整してくれたり、インビザラインのリスクで述べたような治療中の予期せぬ事態にも対応してくれる可能性が高まります。一方、一般歯科医院でインビザラインを受けると比較的安くやってくれるかもしれません。私からのアドバイスとしては矯正歯科そのものの経験の浅いにわかの矯正専門医はマウスピースやインビザラインだけでなんでも治療できると考えたくなるものですが、実際には上記のようなリスクと適応がありますのでインビザラインなどのマウスピース矯正治療のみの治療では患者さんの満足を得られないケースが少なからずあります。

インビザラインを考えている患者さんへ

大切なことなので繰り返しますが、このマウスピース矯正やインビザライン矯正には適応となる症例が限られていますので好みの程度まで口元を下げたいとかガミースマイルを治したいなど大きく変えたい場合は、これらのマウスピース型矯正装置やインビザラインを選択しないでください。ワイヤーと歯科矯正用アンカースクリュー併用の矯正歯科治療による変化には全く及びませんので。

インビザラインができるまでの期間

インビザラインは最初に資料をとって診断するまでは通常の矯正治療の流れと一緒です。診断後は患者さんの歯型と口腔・顔面写真、治療計画書をアメリカのインビザラインの会社(アラインテクノロジー社)に郵送します。会社は送られてきた資料をもとにコンピューターシミュレーションをして現地の矯正歯科医が分析し、その分析結果を日本の矯正歯科医のところへ了承を得るために確認を取ります。この時に矯正歯科医がもっとよいシミュレーションを提案したり修正しながら一連のアライナーが完成するのに通常1か月程度かかります。完成後は一連の装置が送られてきます。来院のたびに口腔内のチェックとともに2か月分(4セット)程度のアライナーをお渡しして治療が進んでいきます。

インビザラインの実際の治療症例

術前

インビザライン治療術前正面
インビザライン治療術前右側面
インビザライン治療術前左側面

八重歯と軽度の叢生を主訴として来院された。患者さんはワイヤーを使いたくないという強い希望があり、顎の歪みがなく軽度の不正咬合であることからインビザラインの適応であると判断した。

術後

インビザライン治療術後正面
インビザライン治療術後右側面
インビザライン治療術後左側面

1年で治療を終了した。八重歯が改善され、歯の叢生も解消され綺麗な歯並びを得て患者さんは大変満足されていた。インビザラインが適応である症例の場合は シミュ レーションからずれることは少ないので最初の シミュ レーション通りに治療が進む。インビザラインの適応から外れた無理な治療計画を立てると最初の治療シュミレーションから予測が次第にズレてくるため何回も再度 シミュ レーション(クリンチェック)をしなければならなくなる。

矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置によっては発音に影響が出る、食事に制限が入る等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/ 
費用:平均約80万円 詳しくは https://facetalk.jp/treatment-costs/
期間:1年程度

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