矯正治療中の痛みへの対処法

矯正用ワックス

矯正歯科治療に伴う痛みとは?

矯正歯科治療に伴う痛みには大きく2つあります。一つは最初に装置を装着するときに独特の痛みが3日程度つづくことです。二つ目は装置自体に舌や頬など周囲の組織が擦れて痛いというものです。

最初に装置を装着するときには歯根に独特の痛みが生じます。ワイヤーの矯正はもちろん、インビザライン(アライナー型矯正装置 以下インビザライン)やマウスピース型の矯正装置でも歯を動かし始めに3日ほど特有の痛みが生じます。この痛みは虫歯の痛みとは異なり、触れると歯根付近に鈍痛があるため、この間は野菜ジュースや卵かけご飯など飲めるタイプの食事でしのいでください。

装置が厚かったりすると慣れるまで装置が当たって擦れて痛むことがあります。例えばKurz型など従来の大きな裏側矯正装置で頻繁にみられたように舌への痛みや不快度が高ければ矯正治療を最後まで継続することも難しい場合があります。

痛みが少なくなるよう生理的で弱い力で歯を動かしていくことはもちろんですが、矯正装置自体の小型化や丸みを帯びた形にするなど痛みや不快度を軽減するために装置自体の改善も進んでいます。

ですが、このようにさまざまな工夫をしても、特に最初に装置を装着したときは次の日の朝ぐらいから3日間ほど矯正歯科治療に特有の痛みが出ます。この痛みはなにも触れていないときは平常どおりで歯に何か触れているときだけ歯根部に鈍痛が起きますので食べ物も飲み物や柔らかいものを食べる工夫が必要です。

装置やワイヤーが当たって痛いときの対処法

矯正用ワックスを使う

 

矯正歯科治療中はさまざまな痛みがありますが、装置やワイヤーが当たって刺さったり擦れて痛い時には”矯正用ワックス”という粘土のようなもので保護します。矯正用ワックスは矯正装置(ブラケット)やワイヤーが頬、舌や歯茎に当たって痛いときに装置の上からワックスを付けてカバーするために使います。特にブラケットを装着すると最初のうちは慣れるまで矯正用ワックスが必要になることが多いです。

装置に慣れた後も矯正用ワックスはいつでも取り出せるようにしておいてください。治療が進んでワイヤーが折れたり、フックがあたったりする可能性があり、矯正用ワックスでカバーする必要が出てくるからです。この場合には折れたワイヤーの端やフックのところをカバーしながら次回矯正歯科医に診せて調整してもらうときまで矯正用ワックスを使用することになります。

使用手順1

まず、ごみや汚れがワックスに付かないように手をよく洗ってください。次に水でうがいするか、歯磨きをして食べ物の残りが装置についている場合には取り除いてください。小豆ほどの大きさのワックスをちぎって取り出してください。

使用手順2

装置に付着しやすいように人差し指と親指で丸めていくと柔らかくなってきます。手が冷たくて柔らかくならないときは両手をこすって暖かくしてから丸めてみてください。

使用手順3

当たっている装置の上に丸めた矯正用ワックスを置いてください。次に押し付けて装置やワイヤーをカバーしてください。ワックスを装置につける際のコツは装置の上下にフックやウイングと呼ばれる小さな突起がありますので上下に挟み込むようにして付けると付きやすいです。ワックスは食べても無毒ですが味はしませんのでおいしくはないです。はがれてきたり外した後は新しい矯正用ワックスに替えてください。

なくなったら矯正歯科医院に行って追加でもらうか購入してください。治療中も快適に過ごしていただきたいので、当クリニックの矯正患者さんには必要なら好きなだけ差し上げています。また、矯正用ワックスは薄く盛っても効果が出にくいときがありますので厚く盛ることがコツです。

いままで説明してきた通常のワックスは蝋燭のロウでできていますので熱いものを食べると溶けてしまったりワイヤーの先端がワックスを貫通して依然として刺さってしまうことがあります。このような時はシリコン製の矯正用ワックスがありますのでそちらを検討してみてください。当院では「ギシグー」というシリコン製のワックスを採用しています。使い方はシリンジを押すと2種類のシリコンが出てきますので粘土のように指でこねて固まる前に先ほど述べたワックスと同様上下から挟み込むようにして装置につけます。

外すときはゴムのように固まっていますからプリっと取れますし、熱で溶けずしかも外れにくく裏側矯正や海外など長期旅行にいかれる方に強くお勧めしております。

それでも刺さって痛い場合は痛いところを矯正歯科医に診てもらってください。ワイヤーが後ろから飛び出ていたり、ブラケットが外れたりしている場合があります。この場合にはクリニックで処置してもらえます。

リップガードを使用する

 

トランペットなど楽器を演奏している方の矯正治療はブラケットやワイヤーが唇の裏に当たって慣れるまで時間がかかることが多いです。このような場合は、適当な長さに切った透明なシリコンの細長い板(リップガード)をワイヤーにあてがうことで矯正治療を続行することが出来ます。こうすることでブラケットやワイヤーと唇や頬が直接触れなくて済むので吹奏楽器を演奏する方でも快適に矯正治療を受けることが出来ます。リップガードが必要かどうかについては担当の矯正歯科医にお尋ねください。

マウスガードをする

空手などコンタクトスポーツをしている方は衝撃で矯正装置が外れたり口の中を傷つけたりしないように、マウスガードを併用して矯正治療を進めることが出来ます。ただし、矯正治療が進むにしたがって歯が動いていくのでマウスガードが合わなくなってきたらその都度、調整したり作り直す必要があります。

応急処置をしてもらう

ワイヤーの先端が飛び出ていたりフックが食い込んでいたりなど何らかの原因で痛い場合はクリニックに連絡をしてワイヤーを切る等の応急処置をしてもらってください。当たっていたいところは切れていたり腫れていたりしていますので炎症を抑えるために口腔内用軟膏を塗ったり、痛みを和らげるために表面麻酔剤を少量塗ってもらったりしてください。

痛み止めの薬をもらう

この矯正歯科治療に伴う痛みは3日間程度でなくなるものですが、どうしても不安な方は最初に痛み止めの薬をもらっておきましょう。

楽器と矯正治療

管楽器を演奏している患者さんは意外と多いです。管楽器は表情筋や舌、歯、唇などを高度に動かして演奏しているため、矯正装置は演奏の邪魔になることがあります。演奏技術が上達している方ほど矯正装置が邪魔に感じてきます。

楽器の種類による違い

慣れるスピードが木管楽器と金管楽器で異なります。どちらかというと木管楽器は金管楽器に比べて不快感や演奏への影響が少ないです。金管楽器は唇を震わせて演奏するため唇の内側が痛くなりがちです。この場合には音楽の先生に大きめのマウスピースに変えられないかたずねてみてください。マウスピースが小さいと唇にかかる圧力が大きくなるため痛みも出やすくなります。

木管楽器にはフルート、ピッコロ、オーボエ、クラリネット、バスーン、サックス、金管楽器にはトランペット、ホルン、コルネット、トロンボーン、チューバがあります。また、最初に装置を付ける場合は先ほど述べたような独特の痛みが3日間ぐらい続きますので音楽の先生に大事な演奏会やコンサートの日にちを前もって聞いておくことで矯正装置を装着する日を調整することができます。

幸いなことに矯正装置をつけながら演奏すると、さらなる練習と情熱をかきたてるため矯正装置に慣れる方も多いですが、まず、矯正歯科治療を考えている方は矯正歯科医に使っている楽器や練習頻度を伝えましょう。力がかかっている時間に比例して歯が動いていくので毎日何時間も練習している人は楽器で押されて歯が動く可能性があるため矯正治療に影響がでることがあります。

インビザラインなどマウスピースタイプの取り外し式の矯正装置で治療している場合には、演奏中に外して装置を使わない時間が増えるほど治療が遅くなるというリスクがあることに注意してください。

裏側矯正の楽器演奏への影響

裏側矯正装置では管楽器の演奏に必須の”タンギング”をするときに舌が装置に当たって演奏に支障が出ることがあります。同様にインビザラインなどのマウスピース矯正も透明な板が歯の内側まで覆っているため舌に当たってタンギングが難しくなることがあります。慣れる方も多いので担当の矯正歯科医にアドバイスをもらってみてください。

声楽と矯正歯科治療

また、オペラなど声楽を専攻されている方は発音が大切になりますので強く表側の装置をお勧めします。口腔内が広いほどこれまで培った発声に影響を与えることが少なくなるからです。

 

歯が動くときの痛みとは~私の矯正体験から

歯が動くときの独特の痛みについて私の経験から伝えておこうと思います。この歯が動くときの痛みに関して「それほどでもない」「慣れるよ」といったあいまいな答えがよく聞かれると思います。ですが、私(院長の工藤淳夫)自身、歯列矯正治療を歯学部の学生の時に経験しましたのでもっと具体的に説明することができます。当時、東京医科歯科大学の歯学部の学生だった頃、矯正装置とワイヤーが上下について粘膜を保護するための矯正用ワックスをもらって矯正治療をスタートしました。痛みに関しては、担当の矯正の先生から「歯が浮くような痛み」と言われましたがよく分からなかったです。でも次の日にその意味が分かりました。。

次の日の朝から3日程度歯に触れたときだけ歯根に鈍痛を感じる特殊な痛みを経験しました。押されている感覚は残っているのに歯に触れたときだけ痛いのです。そのため、歯に触れていなければなんともなく平気でした。この最初の3日間の特殊な痛みは指で触れても食事をしても出ました。したがって、この間はレタスや肉など固形の食べ物は食べることができず、とろろや卵かけご飯などやわらかいものを食べて(飲んで)いました。そして4日目以降は触れても痛みを感じなくなりました。その後、月1回の矯正の調整ごとに新しいワイヤーなどで力がかかると同じような状況になりますが、最初の時ほどではなく、すぐ痛みはなくなりました。後はこれの繰り返しです。

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