小児矯正装置

下あごを前に出す床矯正装置・ツインブロック

小児矯正装置にはどんなものがあるの?

小児期の矯正治療では主に取り外しの装置を使用することが多いです。また、成長期の子供は成長とともに顔立ちや顎、歯並び、生え変わりなど短期間での変化が大きいためにどれかひとつの装置のみで治療が終わるわけではなく、担当の矯正歯科医の治療方針や判断で新しい装置を使用することもあります。当クリニックではお子様の顔立ちとスマイルを好ましい成長に誘導するために呼吸や舌の位置をはじめ、筋肉や機能を矯正力として利用できる装置を多く使用します。舌や頬など歯列や顎に付着する筋肉が発する持続的な弱い力は徐々に骨の形を変える力があるためです。

それでは当クリニックで使用する主な装置をご紹介します。

拡大床

顎が狭い場合に歯列を広げるために使用する装置です。装置の中央にネジがあり、それを回すことによって歯列、歯槽骨をゆっくりと広げていきます。このタイプの拡大装置はゆっくりと歯列の幅を広げる装置で痛みが少なくコントロールもしやすい安全な装置です。小児期の歯列拡大は大人の歯が生えるスペースが無い場合などに使われ、小児期の治療では最もよく使用される装置の一つです。

ジャンピングプレート

下あごが小さい患者さんに使用する装置で上顎に夜間のみ装着します。ジャンピングプレートは装置の下の前歯が当たる部分が滑り台のようになって下あごを前に滑らせる仕組みになっているため、下あごが前に位置し下あごの前方への成長を促す作用が期待されます。軽度の上顎前突の子供に使用します。

ツインブロック

  

下あごがかなり引っ込んでいる印象のいわゆる出っ歯の小児患者さんに使用する装置です。これは上あごと下あごの両方に装着します。咬むと上下の装置同士が滑り台のように斜め滑って下あごが前にガイドされて滑っていきます。食事中にも使用させます。重度の上顎前突の患者さんに使用します。

FKO(エフカーオー)

下あごが後退している患者さんにしようします。下顎を前方に位置させ、なるべく下あごを前に発達させようとする装置です。ジャンピングプレートと異なり、口をある程度大きく開けても下あごは前方に位置されます。FKOは下あごを前に出すと気道が広がりいびきが改善されるため、成人患者さんでもいびきでお悩みの患者さんにワイヤーの矯正と併用することがあります。

ムーシールド

 
 

反対咬合の小児患者さんに使用する装置です。とてもシンプルなつくりで口腔内である程度自由に動きます。早ければ3歳ぐらいの患者さんでもうまく使うことができます。ムーシールドは舌を挙上させて口腔内の内側から舌の圧力で上あごを広げるとともに、上顎の前歯を舌で押すように作用させるため反対咬合が改善していきます。歯型を取らせてもらえない小児患者さん用に既製品があります。もちろん歯型を取らせてもらえて指示を聞いてくれる患者さんであればオーダーメイドのムーシールドも作成が可能です。

リンガルアーチ

リンガルアーチは奥歯に金属の輪っか(バンド)を巻いて太めの針金でつなげたシンプルな装置です。リンガルアーチは奥歯にセメントで接着するため自分で取り外しができませんので24時間矯正力が作用し動きが良いことが特徴です。幅を広げることもできますし、内側に引っ込んでいる歯をバネを付けて押し出すこともできます。小児患者さんだけでなく成人患者さんでも使用することがある汎用性の高い装置です。リンガルアーチも拡大床と同様、小児矯正装置としては良く使用される装置です。

筋機能療法(MFT)

矯正装置とは少し違いますが歯列と関連する周囲の筋肉を正常にトレーニングしてあげることで歯や骨を変えていくことができます。筋機能療法(MFT)とは受け口を引き起こしている低位舌や口呼吸を正常な状態に戻してあげることです。受け口は口呼吸や舌の位置の異常(低位舌)から引き起こされる典型的な咬み合わせですので私はこのMFTを大切にしています。

ボタンなど自宅にあるものでできるトレーニングもありますが必要に応じて装置を作ることもあります。また、鼻が詰まっている場合には耳鼻科との連携も必要になることがあります。

チンキャップ

チンキャップ装着図

知っている方もいるかもしれませんが、伝統的な装置の一つで、寝ているときに頭からかぶって顎を押さえる帽子をチンキャップといいます。しかし、私はもうあまりこの装置を使用していません。もちろん常備してはいますが、当院がチンキャップを最小限の使用にとどめるのは、チンキャップは下顎を時計回りに回転させるため面長になる傾向があるためです。つまり、受け口で多い顔立ちは面長なタイプが多いのですが、さらに顔を長くする装置になります。ですので面長でない顔立ちの受け口の方には長期間使用してもよいかもしれません。

さらに、チンキャップを長期間使わせた小児の歯並びは下の前歯が内側に倒れています。長期間使用するほどこの傾向が顕著です。

こういった理由から当院ではチンキャップを使うなら正常な舌の位置と鼻呼吸を正常に近づけるという受け口治療の本質的な治療をした上で、夜間寝ているとき、ふとした拍子に下あごが前に出ないような補助的な使い方をしています。使用期間に関しても、身長とともに下あごが最も伸びる成長スパート中(第二次性徴期)の短期で使います。

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