開咬(オープンバイト)を改善する矯正治療の方法と効果

開咬の矯正治療

開咬(オープンバイト)の問題点

開咬の基本的な問題は、奥歯で咬んでいる時でも上下の前歯同士が当たらなくなるほど開いてしまっていることです。生活するうえでも、この開咬の咬合状態にあるといくつかの問題がでてきます。

発音しにくい音がある

まず笑ったときのスマイルが悪化するため自尊心に悪い影響が出てきます。また、ざ行やざ行が舌足らずな空気が抜けるような発音になるようになります。これは子供の頃はかわいいのですが、成人すると魅力的ではなくなります。

面長になる

特に成人の開咬の患者さんで顕著ですが顔立ちを見ると咬筋が弱く顎がすっきりした印象です。開咬では鼻から下の顔面下三分の一が長くなるため唇を閉じづらいまたは口を閉じると顎に梅干しのようなシワができることがあります。

顎関節症のリスクが高まる

開咬状態では顎を動かす時に咀嚼筋の負担が大きいため咀嚼筋が疲れ、顎関節症になりやすいです。さらに開咬に伴うこの顎関節症状を和らげるため顎を少し浮かすように舌を上下の前歯の隙間に入れる習慣がついてしまう場合もあり悪循環となります。

奥歯がだめになってくる

開咬は奥歯でしか当たっていないため、食事でも奥歯だけが使われます。そのため奥歯が欠けたり擦り減ったりして銀歯などの差し歯が入っていることが多いです。

開咬の原因

乳歯列期では哺乳瓶やおしゃぶりを長期にわたって継続して使用すると開咬の原因となりえます。小児期でよく見られる原因として親指の指しゃぶり、舌の位置が前方突出位、ペンなど棒状の物を咬む癖です。あまりよく咬まないで食べる習慣がある患者さんも噛む力が弱くなるため徐々に開咬になってきます。

成人の患者さんは小児期に上記の習慣があった既往が明らかな場合もありますが、記憶がない場合がほとんどです。咬筋が通常より痩せている傾向があり、顔立ちは顎がすっきりとしていて面長が多く、前歯部が上下に開いているとともに口が閉じにくく口を閉じるとオトガイに梅干しシワができます

開咬の治療

小児期では開咬になったとしても原因となっている習癖を中止し、正しい機能へと誘導することで自然と前歯が閉じてくる場合があります。例えば、爪に苦み成分のあるマニキュア(マヴァラ・バイターストップ)を塗るなどして原因となっている指しゃぶりを卒業してもらう工夫をしたり、舌の正常な位置を指導したり、ガムを噛んで咬筋をトレーニングしてもらいながら奥歯が伸びるのを抑えたり、取り外し式の機能矯正装置を使ってもらって前歯の開きを治療していきます。

成人の開咬でもワイヤーの矯正とともに、舌の正常な位置の確立や咀嚼筋トレーニングで咬筋を鍛えるなどの指導は必要です。さらに、前歯を閉じてくるような矯正用の輪ゴムをかけることで前歯を閉じて来ることができます。最近では必要に応じて呈出している奥歯を歯科矯正用アンカースクリューで圧下して矯正治療を行います。この際、顎の位置の変化が起こります。歯科矯正用アンカースクリューを併用して奥歯を圧下して開咬を治療すると顎は閉じるように回転してきますので面長だった顔立ちが短くなるのと同時にオトガイ部が前方に出ます。。

また、開咬で前歯や口元が前突している場合には小臼歯の抜歯(通常4番と呼ばれる犬歯の1本後ろの歯)をして治療することもあります。

歯科矯正用アンカースクリュー併用による開咬治療

非外科の開咬の矯正治療には大きく2つに分かれます。一つは従来のように歯だけで閉じてくる方法ですが、この方法では面長な印象は変えられません。もう一つは今回のように歯科矯正用アンカースクリューを併用して臼歯を圧下して下顎のオートローテーションを起こし開咬と同時に少しでも顔を短くしながら治してくる方法です。アンカースクリューを用いたオートローテーションによる治療は下顎が反時計回りに回転することで顔面高が低くなりオトガイがくっきり前に出てくるため今回のケースに良く適応すると判断しました。

術前(ビフォー)

30代の患者さんです。オープンバイトは前歯が上下に開いてソバなど麺類を噛み切れない、あるいは発音でサ行が発音しづらいことが多いです。顔だちの特徴は面長で噛む力が弱く顎が細いことです。この症例は前歯だけでなく小臼歯部まで上下で噛んでおらず大臼歯だけで上下が当たっている重度の開校患者さんです。さらに面長で口元の突出も伴っています。

そこで、抜歯を行うとともに、歯科矯正用アンカースクリューを併用して奥歯をめり込ませて(圧下)、下顎のオートローテーションを起こし、顔を短くなる方向へと変化させながら口元を後退させて大人っぽい印象となるようにしました。唇が閉じやすくなるため口呼吸や感染から守り、発音も正常になるよう指導いたしました。

術後(アフター)

この症例の術前術後の変化で分かるのはオープンバイトが治って上下前歯がくっついていること、特に横顔で顕著ですが、口元の突出がなくなり、面長で顎が長い印象も改善されていることです。矯正治療後は新しいかみ合わせと顎の位置に適応できるよう表情筋や舌の位置の指導を行い、また発音についても指導していきますので年単位で徐々に良い方向に変化・適応していきます。

【本症例の治療法とリスク、期間、料金について】
30代、開咬(オープンバイト)を主訴に来院。小臼歯抜歯、表側矯正装置にて治療を行った。上下左右小臼歯抜歯後、アンカースクリューを併用して、抜歯を行い奥歯をめり込ませて(圧下)、下顎のオートローテーションを起こし顔を短くしながら開咬を治しました。

矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置が頬に擦れて違和感が出る、食事に制限が入る、アンカースクリューが脱離する可能性がある等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくは https://facetalk.jp/treatment-costs/
期間:2~3年程度

※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。

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