表情筋トレーニングに期待される効果
表情筋が衰えてくると重力に逆らえなくなり頬や首がたるんだり、ほうれい線やマリオネットライン(ブルドッグライン)、口角が下がるなど口元の老化現象も起きやすくなります。重力に負けず顔の老化防止を実践するにあたり最もとっつきやすいのがこのボタンプル法による表情筋の筋トレです。
また、口ゴボやオープンバイトなどで口が閉じにくく口呼吸をしてきたような方は矯正治療後にこのボタンプル法による口輪筋トレーニングを必ず教えています。口呼吸が習慣になっている患者さんは口輪筋という唇を閉じる筋肉が弱くなっているからです。ボタンプルで口輪筋を筋トレをさせると唇の筋肉の厚みがまして唇にハリがでてきます。
口輪筋を鍛えると表情筋も鍛えられる仕組み
ボタンプル法は表情筋トレーニングの中でも安価で簡単に材料をそろえることができるだけでなく効果も高い方法です。矯正歯科で伝統的に子供の口呼吸を防止するために口輪筋のトレーニングに使われてきた方法です。
さて、口の周りをトレーニングするとなぜ口輪筋だけでなく表情筋も鍛えることができるのでしょう?それは口輪筋には大頬骨筋や口角挙筋など皮膚を重力に逆らって上にあげる筋肉がくっついているためで、口輪筋の筋トレをすることで間接的にこういった他の表情筋もトレーニングすることができるのです。
実際のボタンプル法
用意するもの
- 大き目のボタン
- 太めの糸
使い方
1. ボタンと糸を上図のように組み合わせます。
首周りがたるむ原因
次は首周りのたるみについてみていきましょう。首周りのたるみには以下のような原因があります。
- 肥満で脂肪がついた
- 加齢とともに皮膚の張りがなくなってきた
- 舌ならびに舌骨の位置が下がっている
- 頚部の筋肉がたるんでいる
この記事では矯正歯科と関連のある3番と4番の原因にしぼってアゴのたるみの解消法について解説していきます。
舌の位置が下がっている
首の形(ネックライン)に最も大きな影響があるのが舌骨の位置です。舌骨は舌が付着している骨で矯正歯科治療で必ず確認します。
舌骨の位置と口呼吸
舌は根元で舌骨とつながっており舌骨からオトガイ方向へも筋が走っています。この舌骨の位置が下がっているとあごのラインが不明瞭になってきます。そこで舌骨を上に引き上げるトレーニングをすることでアゴのラインをスッキリさせることが出来ます。舌骨が下に下がっている方は舌骨を持ち上げるだけの筋肉が弱ってしまっているため舌を天井にくっつけるトレーニングを行います。
舌筋トレーニング
舌も舌筋という筋肉でできていますから筋トレすることができます。まず舌の先端をスポットと呼ばれる上の歯と歯茎の境目に当てながら舌全体を口蓋に密着させるようにします。舌のトレーニング法についてはこちらをお読みになると詳しくわかると思います。
舌骨上筋の衰え
舌骨からオトガイにかけて走る筋肉を舌骨上筋といいます。この筋肉は口を開ける時や舌の運動などで働き、深い位置にある深層筋です。あごが痛くならない程度に口を開く開口するトレーニングで鍛えられますが、先ほど述べたガムを使った舌を口蓋に密着させるトレーニングでも鍛えられます。
表情筋の衰え
首周りのたるみに関係する表情筋として広頸筋があります。この表情筋はオトガイのあたりからのどの辺りに顔の浅い層に広く薄く分布しています。表情筋の特徴は筋肉の端が骨についていないことですので、図のように広頸筋をトレーニングする際には一端を固定する必要があります。まず首に手を置き口を「イー」の口をします。そのままゆっくりと頭を前後左右に回転させ広頸筋トレーニングを行っていきます。
咀嚼筋トレーニング/ストレッチ
咬む力が弱い場合は咀嚼筋トレーニング
矯正患者さんの中には噛む力が弱い人もいて、聞くとあまり噛まないで飲み込むことが多いと言います。咀嚼筋が発達していない人は顔にも現れてきます。あごがシャープで面長になってきます。
咀嚼筋の中でもっとも強力で、かみしめるときに働く筋肉が咬筋です。咬筋が発達していると、その強大な筋肉を支える下顎骨(下顎角の”エラ”)が隆起してきます。咬筋はエラに一端が付着していますので、咬筋が発達している人はエラが発達してたくましい印象になってきます。逆にあまり噛まない人はエラが退縮してほっそりとした印象になってきます。また、あまり噛まないので臼歯が通常より伸びてきて面長になり、前歯が開いてきます。前歯が開いており麺類が噛み切れない咬みあわせを専門用語で開咬(オープンバイト)といいますが、多くのオープンバイトの方の顔だちは咬む力が弱く咬筋が発達しておりません。このような顔立ちや咬み合わせの人には主に咬筋を鍛える咀嚼筋トレーニングが有効です。このトレーニングもご自分でできますので自分は当てはまると思う方は鏡を持って練習してみてください。
- 舌の先端をスポットにつけて、頬骨~エラのあたりに指を置く
- 奥歯を噛み締め、指先から伝わってくる筋肉(咬筋)が収縮している様子を実感する
- 舌の先端をスポットにつけたまま、噛み締めをやめリラックスする
- これを5回繰り返す
ガム咀嚼やガムを噛み締めることでも咬筋は鍛えられます。このトレーニングをバイトトレーニングと呼びます。なお、咬筋の発達度合いに左右差がある場合には発達していない側で咬んでください。
咬む力が強い場合は咀嚼筋ストレッチ
いわゆるエラが発達した顔立ちや、かみ合わせが深い過蓋咬合(Deep Bite)の患者さんは一般的に咬筋が発達しています。このような咬む力が強い方はガムやグミなど噛み応えのある食べ物が好きなことが多くいため、悪化を防ぐために噛み応えのある食べ物を減らして柔らかい物を食べるように食事の指導もします。同時に咬筋のストレッチをしてもらうことで咬筋の緊張の緩和もしていきます。
咬筋のストレッチは口を大きく開けて咬筋が伸びるようにするストレッチです。ストレッチは血行が良い時にゆっくり筋肉を伸ばすのが効果的ですので、お風呂に入りながらやるのが時短と効果の面からも有効です。口を大きく開けて5秒のストレッチして少し休んでの繰り返しを5回くらい行うとよいでしょう。ストレッチとともに指2本程度を伸びている咬筋に対して横にあてて軽くマッサージするのも良いかと思います。