小さな下顎を改善:「顎なし」患者の矯正治療

下顎を前方移動させ筋肉・神経系を適応させた矯正治療

下顎がないいわゆる”顎なし”の患者さんの顔立ちは見た目の問題とともに気道が狭くなる傾向があるため夜間のいびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める要因になっています。また、下顎の発達は意志の強さの表現でもあるので男性で顎がないとかなり気にする方もおります。また、睡眠時無呼吸症候群のように夜間にいびきや呼吸が止まる回数が増えると日中に眠くなり仕事に差し支えることもあります。

下顎を前に出す手術について

ルフォー1型やSSROの両顎手術で一気に大きく下あごを前に出したい場合は手術で顎の骨を切って前に移動させることも有効でしょうが、この下あごを前に移動させる外科手術は筋肉に引っ張られるため顎の関節頭が吸収し開咬を伴って後戻りリスクが高めの手術です。私は外科矯正以外に、下あごがなく下顎が後退している患者さんに対しては、子供でも成人でも原因となっている筋肉と神経の適応を図り骨、関節を適応させ下顎を前方に移動させるような矯正治療を行う技術もあります。ですので外科矯正と通常の矯正歯科治療の違いを患者さんに説明することができます。

下顎が絶対的に小さい場合の矯正治療

「顎なし」と同じく下顎が後退している場合でも下顎の大きさ自体は平均的で、下顎が時計回りに回転している場合があります。この場合には面長になりますので、アンカースクリューを併用して下顎の反時計回りオートローテーションを行い下顎、特にオトガイを前に出して顔を短くします。下顎が絶対的に小さい「顎なし」の治療との違いは顔を短くするか長くするか、オトガイがくっきりと前に出るかどうかです。本症例のように下顎が絶対的に小さく下顔面高が小さい「顎なし」の場合には両顎手術で下顎を前に出しオトガイ形成も加える外科治療が適応ですが、矯正治療で治療プランを立てる場合は下顎を前方に移動させ下顔面の高さを回復する治療プランを立てることが多いです。この場合も外科手術で下顎SSROの下顎前方移動を行ったときと同様にオトガイが不明瞭なままですので、矯正治療後にヒアルロン酸やオトガイ形成術を行うとよりEラインが出るようになります。つまり、下顎が後退していることで悩んでいる場合の原因としては、①下顎が絶対的に小さい②下顔の大きさは普通だが時計回りに回転しているため下顎後退となっているという2つのパターンがあるということです。

以下に下顎が絶対的に小さく下顎が後退している患者さんを矯正歯科治療で治した症例を掲載します。

矯正歯科治療単独で下顎を前に移動させた症例1

術前(ビフォー)

20代の患者さんです。術前では首から顎にかけて輪郭がはっきりとしていません。いわゆる「顎なし」の状態です。口元は突出感が強いのがわかります。咬み合わせは上下とも前方に突出している上下顎前突という咬合です。

術後(アフター)

術後ではあごや首の輪郭がはっきりとしており下顎が前に出て”顎がある”のがわかります。正面や横から見て口元の突出感がなくなり平均顔な口元の審美性が現れています。当然、咬み合わせは正常で1本に対して2本上下で噛んでいるのがわかります。

【下顎が小さい顔立ちの矯正治療】
症例の概要と治療法:歯の叢生と下顎の後退を主訴に来院。上下小臼歯抜歯、表側矯正装置にて治療を行った。第一小臼歯抜歯、表側矯正にて舌骨筋群のトレーニング(ストレッチ)を併用しながら徐々に下顎の位置を変えていきました。手術で前に出す治療とは異なり、本治療は顎関節の骨適応が年単位でゆっくりと起こることを期待します。
矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置が頬などに擦れて違和感が出る、食事に制限が入る、アンカースクリューが脱離する可能性等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくはhttps://facetalk.jp/treatment-costs/
期間1年半~3年程度

下顎を後方に引っ張る舌骨筋群のストレッチについて

先ほどの成人患者さんの矯正治療では、舌骨筋群のトレーニング(ストレッチ)を併用しながら徐々に下顎の位置を変えていきました。この治療は手術で前に出す治療とは異なり舌骨筋など下顎に付着している筋肉を徐々に伸ばしながら行うため後戻りのリスクを軽減しながら、顎関節の骨適応が年単位でゆっくりと起こることを期待する治療です。夜間は下顎を前方に位置させ首・のどの筋肉が緊張してこないよう、また気道を広げいびきや睡眠時無呼吸症候群にならないよう上下のマウスピースを下顎を前に出した位置でレジンでつなげた特別なリテーナー(Jaw リテーナー)を使用します。

下顎後退と口ゴボの矯正治療症例2

10代の患者さんです。下顎が絶対的に小さいいわゆる「顎なし」で下顔面も短すぎるため顔全体のバランスが悪くなっており、口元が出ているいわゆる「口ゴボ」も併発していることを考慮してEラインなどの側貌を整える観点からも小臼歯抜歯を行いました。舌骨筋群のストレッチを指導しながら、下顎を絶対的に前に出し咬合を安定させて下顎に付随する筋肉や顎関節周りの神経や骨の適応をじっくりと行うことで顔の美容面を最大限に配慮した矯正治療を達成しました。表側矯正装置を用いて歯科矯正用アンカースクリューを併用して治療を完遂しました。

矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置が頬などに上がり違和感が出る、食事に制限が入る、アンカースクリューが脱離する可能性等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくはhttps://facetalk.jp/treatment-costs/
期間1年半~3年程度

顎なしだが上顎の位置は正常で顎を前に移動させEラインを作った非抜歯症例

顎なしだが上顎の位置は正常・非抜歯症例

10代の患者さんです。顎なしでも口元の突出感がなく上顎は良い位置にあるタイプで白人に多い下顎後退の顔貌の患者さんです。多くの矯正専門医は上顎の小臼歯抜歯をして小さな「顎なし」の下顎の位置に合わせて咬合を作ろうとしますが本症例では非抜歯にて逆に正常で整った位置にある上顎に合わせて下顎を前に移動させ咬合させて顎関節の適応とEラインを作る治療を上顎裏側・下顎表側のハーフリンガル装置を用いて行いました。

矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、裏側矯正装置は舌に当たるため発音に影響が出る、食事に制限が入る、アンカースクリューが脱離する可能性等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくはhttps://facetalk.jp/treatment-costs/
期間1年半~3年程度

※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。

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