歯の叢生(乱杭歯・八重歯)の治療方法と効果的な矯正治療について

叢生の矯正治療

八重歯は魅力的?

海外、特にアメリカは歯並びのよさが重要視される社会ですが、そんな人もハロウィーンなどのお祭りではドラキュラ風の牙をつけて楽しむようです。最近は日本でも八重歯をわざわざ歯科医院でつけたがる方がいるようです。この記事ではそんな八重歯ブームの背景や八重歯の問題点、その治療法について一緒に考えていきましょう。

八重歯はかわいいとか魅力的という人もおり、チャームポイントと考えるようです。でも年齢や時代によって美意識は変わるものです。八重歯を治しに矯正治療を希望される患者さんは、「八重歯は子供の頃はかわいいと思っていたけど大人になるにつれて八重歯が嫌になった」ということもよく聞きます。私もきれいな歯並びで笑ったほうが魅力的だと感じます。

八重歯があると口角付近の上唇がすこし膨らんで見えるため八重歯を治した患者さんは口元がスッキリして小顔な印象にもなります。逆に八重歯があると唇がその上に乗るためその部位の上唇が膨らんでアヒル口のように見えますが、そういう唇の盛り上がりが好きな方は矯正すべきではありません。矯正治療でワイヤーをかけるとそのような八重歯はまっすぐになるため唇の形も変わるからです。

八重歯や乱杭歯の問題点

八重歯は見た目以外にも衛生面や口腔機能面から問題になります。乱杭歯(叢生)や八重歯の周囲は隣の歯と重なる部分があるため磨きにくくなります。歯並びが悪い部位では物が詰まりやすくプラークが溜まりやすくなりますので虫歯になったり、歯ぐきも腫れやすくなります。

八重歯があると犬歯が出ている分、口が閉じにくくなり口が開きやすくなります。口を開けている時間が多いほど口腔内の細菌が繁殖しやすい環境となるため臭いもでてきます。まずは歯磨きを時間をかけて丁寧にやることです。フロスやワンタフトブラシ(筆のような歯ブラシ)をうまく使うとよいです。

八重歯・乱杭歯の歯科治療

八重歯の治療は矯正歯科治療できれいに治る

次に治療ですが、八重歯は犬歯といって、上下の犬歯で顎の移動をガイドするため機能的に重要な役割を持っています。顎をガイドする犬歯の歯根は長くしっかりしています。八重歯を抜くことが昔は多かったようですが、どうしてもやむをえない場合を除いて矯正歯科治療で犬歯を動かして治療することをお勧めします。一番の理由は先ほど述べたように犬歯は顎をガイドする大切な歯だからですが、前歯6本がそろっていないと笑った時にあまりきれいに見えなくなるからでもあります。小臼歯は上下左右に各々2本ずつありますので小臼歯を抜歯して矯正歯科治療を行うのが通常です。

八重歯の治療で歯を削る?

そのほかの治療には歯を削ってセラミックや白い人工の歯をいれる治療もあります。いわゆる審美歯科治療でクイック矯正などと呼ばれています。八重歯のように大きく歯根がずれている場合、審美歯科だけで治療しようとすると多量に削り場合によっては抜歯もして無理な角度で差し歯を入れなければならないことが多く、異常な力がかかって破切したりして長持ちしにくくなります。また、ぱっと見は良いかもしれませんが、歯ぐきの位置がそろっていないのであまり審美的な結果は得られにくくなります。アメリカでは審美歯科が花盛りですが、彼らは前提として矯正治療で歯並びを治す文化があるから審美歯科治療をおこなってもきれいに仕上がるのです。

そもそもなぜ歯並びが悪い人が多いのか?

不正咬合は多くの人に認められますが、いつの時代からこんなに歯並びが悪い人が多くなったのでしょう?人類学的調査の結果、歯並びの異常の発生率がわずか数百年で数倍も高くなっているということが分かりました。現代人の多くは都市で生活していますが、現代文明の影響をほとんど受けずに残っている集団、例えば、オーストラリアの先住民や南太平洋の島民には歯の叢生はほとんど見られません。ほとんど調理されていない硬い食べ物を食べないと生きていけないので顎骨が発達し、歯が大きくても顎に収まるのです。

進化の過程で顎が小さくなっている

また、化石を経年的に見ると、現代人の歯がどんどん小さくなり、歯の数も減少し顎の大きさも小ぶりになっています。この傾向はこれから歯並びや顎の大きさがどうなるのか進化の方向性を物語っています。十万年前の歯、一万年前の歯、現代人の歯を比較したところ、全ての種類の歯で縮小・退化傾向が認められました。私の経験からも親知らずや側切歯が退化し小さくまたははじめからない人が多いと感じています。実際自分も下の第2小臼歯がはじめからありません。顎の大きさがどんどん縮小し、それが歯の大きさや数の減少とうまく調和しないならば、歯の叢生や八重歯などの歯並びが悪くなることは容易に理解できます。

都市生活と田舎生活で歯並びが違う?

不正咬合は人が田舎から都会に移り住んだ場合に増加することが知られています。これは人間が農耕生活を捨てて都市で生活するようになると急激に増加する、高血圧、心疾患、糖尿病などの生活習慣病と似ています。一般に都市型の食生活はファストフードややわらかく調理された料理で生活することが多いので、あまり噛む必要がなくなり顎の骨がシャープに細くなっていきます。逆に、よく噛んで食べる方は咀嚼筋や顎の骨が発達しています。

現代社会は原始時代とは異なり、顎や歯の機能が十分でなくても生存できるという状況があるため顎や歯が小さくなっているのです。しかし、このような顎や歯の数の変化は現代の環境にうまく適応する進化の過程だと私は考えております。環境に適応できない種は滅亡します。もしかすると都市生活を送り続けて数百年後には環境に適応して歯の数とサイズが顎の大きさと調和して今より歯並びが悪い人が少なくなっているかもしれませんね。

重度の乱杭歯の矯正治療症例

それでは実際の八重歯・乱杭歯の矯正治療を見ていきましょう。30代の患者さんです。乱杭歯は歯磨きがしづらくなり歯周病や虫歯のリスクが上がるためなるべく歯並びをまっすぐにして歯磨きをしやすくすることは長く自分の歯を保つことにもなります。今回の叢生の治療は重度の叢生で小臼歯を上下左右計4本抜歯しました。さらに口元の突出も改善すべく歯科矯正用アンカースクリューを併用して抜歯スペースを最大限に活用し、さらに歯列全体を奥に移動させて前歯を後ろに下げました。

術前(ビフォー)

  

30代後半の女性で重度の歯の叢生で歯周病のリスクを近くの一般歯科医院で指摘されて当院の治療を求めて来院されました。

術後(アフター)

  

小臼歯抜歯で叢生をほどき歯並びをまっすぐにするスペースを確保し、さらに口元の突出を改善するために歯科矯正用アンカースクリューを併用して歯列全体を2mm程度奥へ動かしました。患者さんは非常に満足していました。

【本症例の治療法とリスク、期間、料金について】
30代の患者さんです。歯の叢生を主訴に来院。小臼歯抜歯、表側矯正装置で治療を行いました。乱杭歯は歯磨きがしづらくなり歯周病や虫歯のリスクが上がるためなるべく歯並びをまっすぐにすることは長く自分の歯を保つことにもなります。今回の叢生の治療はあまりのガタガタで小臼歯を上下左右計4本抜歯しました。さらに口元の突出も改善すべく歯科矯正用アンカースクリューを併用して抜歯スペースを最大限に活用して前歯を後ろに下げるようにしました。

矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置が頬に擦れて違和感が出る、食事に制限が入る、アンカースクリューが脱離する可能性がある等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくは https://facetalk.jp/treatment-costs/
期間:2年程度

 

※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。

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