睡眠時無呼吸症候群とは
いびきをかいたり、口ゴボなどで口を閉じて鼻呼吸することが難しい方などは睡眠時に呼吸が停止したり換気率が低下したりして深い眠りにつくことができず集中力が低下し日中眠くなる傾向があります。重度になるにしたがって睡眠中に1時間当たり呼吸が10秒以上停止する、または換気率が50%を切ることが頻繁に起きるようになります。これらの頻度が1時間に5回以上も起きたり一晩に30回も起こると睡眠時無呼吸症候群と診断されるようになります。いびきがすごいと言われる方は睡眠専門のクリニックで診察を受けてみてはいかがでしょうか。
睡眠時に無呼吸が頻繁に起こると日中眠くなる以外にも、免疫力が低下する、高血圧や肥満、糖尿病など生活習慣病に罹患しやすいことなどがあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因
小児期では扁桃腺が腫れたり、アデノイドと呼ばれる咽頭腺の肥大が気道閉塞のリスク要因となっています。逆に年を取ってくると喉や舌の筋力が低下し横になったときに舌根が沈下やすく気道が妨げられ、いびきをかきやすくなるため加齢自体がリスク要因となります。また、下の顎が小さいいわゆる顎なしだったり出っ歯や肥満体質で首回りに脂肪がついている方も気道を狭める要因となりますので注意が必要です。睡眠時無呼吸症候群は男性の方が多いといわれますが女性の無呼吸も少なくないことが報告されています。
このように睡眠時無呼吸症候群は気道の閉塞が起きることが原因です。中には中枢からの呼吸指令が止まる難しい原因もありますが大多数は物理的な気道の閉塞によって起こります。
睡眠時無呼吸症候群の治療法
睡眠時無呼吸症候群の治療にはCPAPという方法が一般的です。CPAPはマスクを睡眠時に着用して空気を送り込むことで気道の閉塞に対処する方法です。CPAPは睡眠専門のクリニックで治療が受けられます。他の方法として代表的な処方はスリープスプリントと言われる睡眠時に下顎を前方へ引き出す位置に固定するマウスピースを使用する方法があります。スリープスプリントは睡眠専門クリニックから紹介を受けた歯科医院で作ってもらえます。
矯正歯科医ができること
いびきは睡眠時無呼吸症候群の兆候
いびきをかくなどの兆候が見られた時にはまず下顎が小さくないかを確認してみてください。もし下顎が小さい場合には下顎を前方へ移動させた位置で下顎を適応させる矯正治療が有効です。特に成長期では習慣的な力に対して骨の適応が早く起こるため成人と比べて有利です。
扁桃腺が腫れてないか?
他には、口を大きく開けて扁桃腺が肥大していないかを見てください。過剰に肥大している場合には耳鼻科を受診してみることをお勧めします。また、咽頭腺の肥大(アデノイド)はセファログラムという頭蓋全体を写すレントゲンでわかりますが、アデノイドは小児期には肥大していることもよく観察されますが、通常気道閉塞までは起きません。小児矯正においてアデノイドが非常に肥大していびきなどの兆候がある場合には矯正治療と並行して耳鼻科受診を勧めております。
下あごが小さい場合
成人で下顎が小さい場合、骨切り手術ではなく矯正治療のみで下顎が小さい方ののどの筋肉(舌骨筋群)のストレッチ指導と正常な舌の位置と鼻呼吸の確立、下顎を前方位で適応させて咬み合わせを作ることで見た目がよくなるだけでなく、気道が広がるためいびきの改善に役立ちます。
この治療はいわゆる下顎が小さい”あごなし”の顔立ちにお悩みの方に行うことが多いのですが、副次的な効果としていびきの改善がみられることがあります。
この下あごを前方に移動する矯正治療を行った場合、寝るときには透明な薄手のマウスピースを下顎を前方位で上下固定したスリープスプリントをリテーナーとして使ってもらいます(Jaw Retainer)。
口腔内を広げる
成人でも舌を収める口腔内容積を上顎骨から広げることで舌根が気道の方にいって気道を狭めないようにすることが矯正歯科治療で可能です。それが矯正用アンカースクリューで急速拡大装置(写真中央の金属の装置)を固定し拡大していく方法です。当院ではいびきで悩んでいる方を矯正治療する際にはこの成人用急速拡大装置の使用も考慮します。