従来の裏側矯正について
裏側矯正(舌側矯正)は、歯の裏側に装置を装着するため外から見えにくく、特に成人の患者様に多く選ばれてきた治療法です。とりわけ上顎は目立ちにくいという特徴があります。
従来の裏側矯正装置は、Dr. Kurtz による Kurz型装置 に代表されます。これらの装置は当時としては画期的なものでしたが、いくつかの課題もありました。
従来装置の主な特徴と課題
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装置自体が大きく厚みがある
専門技工士が既製ブラケットを手作業で位置づけし、接着用レジンを盛り足して調整していたため、装置に厚みが出やすく、強い違和感を生じやすい構造でした。 -
脱離しやすい構造
装置の厚みがある一方で接着面が比較的狭く、歯や食べ物と接触しやすいため、外れてしまうケースも少なくありませんでした。 -
再装着に手間がかかる
万が一装置が外れた場合、「ジグ」と呼ばれる位置決め器具を使用して再装着する必要があり、チェアタイムが長くなる傾向がありました。 -
ワイヤー調整の難易度が高い
従来の裏側矯正では「マッシュルームアーチ」と呼ばれる、キノコのような独特な形状のワイヤーを屈曲する必要があります。このワイヤー調整は術者の技量に大きく依存し、診療時間の増加や治療費の上昇につながる要因でもありました。
このように、従来の裏側矯正は審美性に優れる一方で、装置の厚みや操作性、術者依存性といった課題が存在していました。
3Dデジタル・ロボット技術を活用したオーダーメイド裏側矯正

近年、他分野の医療技術と同様に、裏側矯正のシステムもこの10年で大きく進化しました。
現在では、患者様の歯型をコンピューター上で治療設計を行い、そのデータをもとに一人ひとりに合わせたオーダーメイドの装置とワイヤーをロボットが製作する時代になっています。
デジタル裏側矯正の特長
1.歯面に精密にフィットする完全オーダーメイド設計
従来の既製装置とは異なり、歯の裏面の形態に合わせて一つひとつ設計・製作されます。そのため装置が歯面に高精度でフィットし、外れにくい構造になっています。
2.再装着が容易
万が一装置が外れた場合でも、従来のようなジグ(位置決め装置)を必要とせず、スムーズに再装着が可能です。
3.ロボットによる高精度ワイヤー加工
ワイヤーはロボットが設計データ通りに精密に屈曲します。これにより、従来の裏側矯正特有の複雑なワイヤーベンディングが簡素化され、ストレートワイヤー法と同様にシンプルでシステマティックな治療が可能になりました。
4.属人性の大幅な軽減
デジタル設計とロボット製作により、ワイヤーと装置をストレートワイヤー法に設計できるようになり術者の経験や感覚に依存する割合が大きく減少しました。これにより、より安定した治療品質が実現されています。
ハーフリンガルとは
上の歯は裏側矯正、下の歯は表側矯正で治療を行う方法を、一般に「ハーフリンガル」と呼びます。
では、上だけを裏側矯正にすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
違和感を大きく軽減できる
裏側矯正は目立たない一方で、
・違和感が強い
・発音への影響が出やすい
・清掃性がやや劣る
といったデメリットがあります。
特に違和感は、
「表側矯正 < 上の裏側矯正 < 下の裏側矯正」
の順で強くなりやすい傾向があります。
そのため、上下とも裏側矯正を行う場合と比べて、上のみ裏側にするハーフリンガルは、治療期間中の快適さという点で大きなメリットがあります。
下の裏側装置は実は見える?
裏側矯正装置は目立たないことが特徴ですが、実は笑ったときに違いが出ます。
口を開けて笑うと、上の裏側装置はほとんど見えませんが、下の歯の裏側は比較的よく見える位置にあります。鏡で口を開けてみると、下の歯列の内側が見えることが分かります。
そのため、見た目の観点からも「上のみ裏側」という選択は合理的といえます。
下の表側装置も目立ちにくい
ハーフリンガルで下に装着する表側装置には、現在では審美性に配慮したものを使用します。
例えば、
- セラミック、ジルコニアブラケット
- プラスチックブラケット
- ロジウムコーティングブラケット
など、白色〜ホワイトゴールド調の目立ちにくい装置があります。従来の金属装置と比べ、自然な見た目で治療が可能です。
費用面のメリット
裏側矯正装置はオーダーメイドで製作されるため、上下に装着すると単純に製作コストは2倍になります。
そのため、上下とも裏側矯正を行う場合と比べて、ハーフリンガルは費用を抑えられることが多いのも特徴です。
裏側矯正でも美しい仕上がりを実現するために
― 抜歯矯正に必要な装置の条件 ―
抜歯矯正では、歯を傾けるだけでなく、歯根から平行移動(歯体移動)させることが重要です。
そのためには、断面が四角い「角ワイヤー」と呼ばれる、ある程度剛性のあるワイヤーを使用する必要があります。これにより、抜歯したスペースを整った形で閉鎖することが可能になります。
一方、マウスピース矯正では構造上、傾斜移動が主体となりやすく、前歯や奥歯が傾く傾向が見られることがあります。歯根のコントロールという点では、適応症の見極めが重要になります。
アンカースクリュー併用によるシンプルで効果的なコントロール
当院では、技術革新を積極的に取り入れシンプルでシステマティックな治療を構築しています。
裏側矯正においても、歯科矯正用アンカースクリュー(矯正用インプラント)を併用することで、歯根方向へのコントロール(トルク)をよりシンプルかつ効果的に加えるシステムを導入しています。
これにより、裏側矯正でも審美性と機能性を両立した、美しく安定した歯並びを実現しています。
※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。








