顔の審美性について

Eライン

正面から見た顔の審美性

顔の高さの比率

 
 
正面から顔をみたとき垂直的に3つに分けることができます。下顎の先端(オトガイ)から鼻の下、鼻の下から眉毛まで、そしておでこです。これらが均等な比率の人はめったにいませんが、これが垂直的なゴールデンプロポーションになります。
さらに細かく見てみると、鼻の下から口唇までの距離と口唇からオトガイまでの距離が1:1.7であることをヴィーナスプロポーションといいます。上2つを変えるのは難しいですが一番下、つまり鼻の下からオトガイまでの距離を整えることは矯正治療で可能です。

矯正治療で顔面下1/3を変える

 
先ほど言いましたようにこの3つがゴールデンプロポーションである人はめったにいませんから、下1/3を整えることで顔の印象の改善が望めるのです。この図は紙で書かれていますのでわからないのですが、実際の患者さんの顔を見るときは凹凸感まで感じ取り患者さんとのインフォームドコンセントに生かしていきます。下顔面の長さを変えた実際の治療症例をみると分かりやすいと思います。
 
 
【エラが張り下顔面の高さに問題がある矯正歯科治療】

エラが張って笑っても歯が見えない患者さんの矯正歯科治療

噛み合わせが深く顔だちも顔面下1/3がつぶれて短くなっていることも気にされて来院。いわゆる過蓋咬合(ディープバイト)。先天的に下顎前歯が2本しかなく噛む力の強さも相まって下顎が反時計回りに回転しオトガイが前にでてしまっていた。噛む力を反映するエラも発達しており治療計画に反映した。

咬筋のストレッチや食事指導などで噛む力をコントロールし、矯正用アンカースクリューを併用して下顔面の高さを回復し整った顔貌を得ることに成功した。
 
矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置によっては発音に影響が出る、食事に制限が入る等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくは https://facetalk.jp/treatment-costs/
期間: 3年程度
 
※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。
 

顔の正中はどうやって決めているの?

人間の顔はまったく左右対称な人はいません。顔の真ん中を境にして右と左で若干違っていてそれが普通です。では、真ん中の線はどこなのでしょう?それは両目の内側同士を測った中点と、鼻の下の人中の一点を結んだ線が顔の真ん中です。私たちは普段、歯がズレていると感じるのはこの顔の真ん中の線に対してです。ほおづえなどの毎日の癖や生活習慣で顔の左右差が明らかに出てきてしまうことがあります。顔の左右差があまりにも明らかなときはその原因を特定して徐々に解消していかなければなりません。

エラの幅のゴールデンプロポーションとは?

先ほど言った様に左右が全く同じ顔の人はいませんので、気にしすぎるのも問題があります。顔の幅の基準として、左右の頬骨間の幅と顎のエラの幅の比が10:7程度でフェイスラインが美しくみえます。ですのでエラが張っている人は10対10に近くなっているものです。エラ張りの顔だちを歯科矯正用アンカースクリューを併用して矯正治療で整えた症例もご覧ください。

横顔の美しさの基準

頭のレントゲンを横から見るといくつかの横線が引けます。これらの横線はある一点に収束する傾向があります。上の図で収束点が左に離れれば離れるほど顔は四角くなっていき、右に近づけば近づくほど面長になっていきます。かみ合わせにも影響を与え、顔が四角い人はかみ合わせが深く面長の人は前歯が開いていることが多いです。このように歯並びは顔の形と深い関係があるのです。機能が筋肉と調和している人の顔はこの収束点がある一定範囲内に収まってきます。もちろんその人の顔の個性はありますが、四角すぎもなく長すぎでもない整った顔になるのです。顔のバランスが崩れてくるとこれらの線は一点で収束せず、乱れてきます。

 

では実際に横顔を見るときにどこをどう見ると整っている整っていないの違いがわかるのでしょう?まず、上の図のように地面に垂直な線を鼻の付け根に1本引きます。この線から測って鼻の高さが高いとか、顎が出ているなどと判断します。頭の位置は姿勢で変わってきますのでまず、姿勢が正しいか写真に収めて判断します。パソコン画面に仕事で長時間向かっている人が増えていますので、癖や生活習慣の乱れは頭の位置に影響します。有名な基準線にEラインがありますが、鼻の頂点から下顎のオトガイの頂点を結んだ線です。横顔が美しい人に多いのはEライン上に鼻・上唇・下唇・オトガイが大きくズレることなく乗ってきますが、これも一つの基準にすぎないのでEラインだけで判定するのは早計すぎます。

下あごが出ていると男性的に見える

日本人は下の顎が出ているいわゆる受け口の人が多いです。一方、白人(北ヨーロッパ系)は下顎が引っ込んでいる人が多く、そのため日本ではほとんど使用されていない矯正装置を使用して下顎を前に出したりしています。下の顎が出ているほど横顔が男性的に見え、引っ込んでいるほど女性的に見えます。下あごが出ているほど意思が強そうに見えるからです。

首のラインからわかること

顎から首にかけての美しさは、顎の大きさだけでなく加齢や生活習慣との関連が深いので改善にはライフスタイルを改善する必要があります。例えば太り気味の方はネックラインがまっすぐではなく、たるみが入り首が見えにくくなりますし、あごが小さい人はネックラインが短くなるので顎が見えにくくなります。夜いびきをかく人はネックラインが短い人やたるんでいる人は気道が狭くなっている可能性がありますので注意が必要です。

また、SSROなどで下顎を外科的に大きく後退させた場合にも顎の下にたるみがでることがあります。

鼻と唇のなす角度

鼻の形には様々あり、鼻が高い人低い人、上を向いている人下を向いている人など鼻の形は様々です。では、唇と鼻はどのような関係であれば横顔がキレイに見えるのでしょう?上の図では、鼻と上唇との角度を示しています。一般に、この角度がアジア系の人であれば90度~100度程度で美しく見えます。一方、鼻が上を向いている人ではこの基準のまま判定すると唇はもっと前に出てしまうことになりますよね?そのときには地面に垂直な線を鼻の付け根に引いた線(横から見た顔の審美性を参照)で唇の位置を判定していきます。

下唇では唇からオトガイにかけてのラインがゆるやかなS字を描いていると、とてもキレイに見えます。これをオトガイ唇溝といいますが、深いS字や直線、あるいは角度がついていたりするとその原因が必ずありますのでそれを見つけて改善していきます。このように、顔の審美性の診断には複数の基準を見て総合的に判断する必要がありますので、矯正歯科医個人が美容に関する広く深い学習と経験を持ち合わせている必要があります。

小顔とは?

小顔という言葉はエステ業界では顔が小さくなることと解釈されているようです。確かにむくんでいる顔は顔を大きく見せますのでマッサージで老廃物や細胞間液をリンパ管や静脈に流し込んでやればスッキリとした顔になるでしょう。しかし、筋や骨など本来の顔立ちはエステでマッサージ圧をたとえ1日2時間かけ続けたからといって変わるものではありません。

骨は弱い持続的な力で年単位で変わる

骨が変わるには24時間に近いぐらいの機能的、継続的で生理的な力が最低半年以上日常的にかかっている必要があります。例えば中国で女子に行われる纏足(てんそく)は常に自分の足を小さな靴で拘束することで徐々に足の骨の形を小さく変えていきます。小さな靴を習慣として履き続けた結果、筋、骨をその足の環境に適応させ、小さく形を変えているのです。

継続的な弱い力には筋や骨は敏感に反応します。もう一つ分かりやすい例を挙げれば、宇宙飛行士の例があります。宇宙飛行士は無重力空間で生活しなければなりませんが、筋肉は寝たきりの2倍、骨は骨粗しょう症の10倍のスピードで萎縮して細くなっていきます。そのため、半年程度のローテーションを組んで宇宙で自らの身体をつかって実験しているのです。地球に帰ってきたときには自力で立てないためスタッフに抱きかかえられて運ばれます。

平均顔とは?

そこで、小顔という場合は整った顔立ちということで多くの顔の平均をとった顔立ちを指し、これを平均顔と呼びます。平均顔は多くの顔立ちを平均した顔で、もっとも整った顔立ちです。実際AKBの平均顔はそれぞれのメンバーの顔より整っているという動画もありました。特に女性の平均顔は顎が小さめなので顔が小さく見えるため小顔はとても整って見えるのです。特に顔の下1/3は顔の印象をかなり決めてしまいますが、矯正治療ではこの顔面下1/3の印象を変えることができます。

小顔ではないと感じる理由

なぜ小顔でないと感じてしまうのでしょうか?それは平均的な顔の基準からずれていくほど顔のゆがみとして現れ、平均顔に近づくほど小顔に近づいたと感じるからです。そのほかにも小顔から外れてしまう要因があります。小顔=平均顔になるにはまずその原因を知り、自分でできること、できないことを知ることかが大事ですので、矯正歯科学と抗加齢医学、周辺学問に基づいて述べさせていただきます。

まず原因ですが、ほとんどの遺伝子的に正常範囲内の方は、さまざまな原因で顔が大きく見えると考えられます。5つの考えられえる原因として、

  1. 顔(特に頬、首周り)に脂肪がついてふっくらしすぎている
  2. むくみで顔が張っている
  3. 悪い生活習慣や癖などで機能や筋肉が不正になるため平均顔からずれてくる
  4. 八重歯や前歯の突出で口元のボリュームが大きく見える
  5. 皮膚や筋のたるみでハリがなくなっている

が考えられます。

小顔でなくなる原因の考察

脂肪に関して

自分が太っているなと思う方は、科学的根拠のあるダイエット法で安全に生活習慣を改善していくことで対応してください。具体的には糖質制限をすると果糖など脂肪に変わりやすいものを食べなくなるので痩せます。

むくみに関して

老廃物を含んだ水分がリンパや静脈からスムーズに流れていかないことが原因で顔の細胞間にたまっていき顔が張ったようないわゆる『むくみ』といわれる現象がおきやすいのです。一般的には、動脈には血液を押し出す働きがもともと備わっているのですが、リンパや静脈にはそのようなポンプ作用はありませんので、ストレスや生活習慣の乱れでむくみが生じやすいです。このむくみに関して、ご自分で静脈、リンパの走行に沿ってマッサージで改善してきます。エステでフェイシャルのマッサージをして小顔になるというのはリンパや静脈に老廃物を含んだ水分を流しているからなのです。

生活習慣と筋肉

 例えば食事の際に使用する筋肉は咀嚼筋です。4つある咀嚼筋の中でもっとも強大なのが咬筋で、筋の一端が顎のエラあたりについています。このため、よく咬む人や咬み応えのあるガムやグミが好きな方にはエラが張っている人が多いです。この咬筋が発達している方はディープバイトといって咬み合わせが深くなってきます。下の図は噛み合わせが深く口角も下がって見えますが噛み合わせと顔下1/3の高さを平均値に近づけた結果、より整った”小顔”になっています。

 

逆によく噛まないで生活していると14代将軍徳川家茂のように面長にあごがほっそりとしてきます。いわゆる現代的な顔立ちでマクドナルドなどのファストフードを食べるようになった現代人に多い顔です。この場合には咬み合わせが浅くなり開咬という状態になります。経験的に言っても咬み合わせと顔立ちはかなりの確率でリンクしていますので、私は顔を見ただけで骨格や歯並びの予想がだいたいつきます。

八重歯や前歯の突出(いわゆる出っ歯)

八重歯や前歯の突出などで歯が出ていればそれだけ口元、顔面下1/3の突出感が強くなりいわゆる’口ゴボ’の状態になります。

たるみに関して

老化と深い関係があります。人はみな年を取るとホウレイ線やたるみが出てくるものですが、不必要なたるみやシワは避けることができます。このたるみで顔に締りがない感じに見えてしまうことで顔が大きく見えてしまうこともあります。たるみの原因にはもちろん皮膚の老化もあるのですが、大きな変化を引き起こす原因としては皮膚の下の筋肉が弱くなっていることがあります。このため表情筋をはじめ、舌の位置、咀嚼筋、頚部筋なども含めてを総合的に判断します。

参考文献

  1. CONTEMPORARAY ORTHODONTICS PROFFIT 2000 Mosby
  2. Facial and Dental Planning for Orthodontists and Oral Surgeons Arnet et al. 2004 Mosby

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