アンカースクリューを使用した矯正治療

矯正用アンカースクリュー・ミニインプラント

歯科矯正用アンカースクリューとは

歯科矯正用アンカースクリューは、小さなチタン製のネジを歯と歯の間の歯槽骨や口蓋などに設置し、歯を動かすための「固定源」として使用する装置です。

このスクリューにゴムやコイルスプリング(バネ)をかけることで、歯に安定した力を加え、計画通りに歯を移動させていきます。


一時的に使用する装置です

アンカースクリューは、矯正治療の期間中のみ使用する一時的な装置です。
治療終了後には撤去し、いわば“使い捨て”の固定装置です。


安全性と歴史について

歯科矯正用アンカースクリューは、もともと顎の手術(口腔外科手術)において骨片を固定する目的で使用されていた医療用材料が基になっています。そして2012年7月、厚生労働省により「矯正歯科治療時の固定源」として正式に認可され、現在では確立された矯正治療手段の一つとなっています。

小さなチタン製のネジ「歯科矯正用アンカースクリュー」を使用することで、これまで技術的に難しかった歯の移動が可能になりました。従来の矯正治療では、力をかけるための十分な固定源を確保することが難しく、治療には一定の限界がありました。

例えば、

  • 口元の突出感(いわゆる口ゴボ)を改善したい場合でも、前歯が内側に傾くだけで、歯根からしっかり後方へ下げることが難しい

  • ガミースマイルの治療において、歯を理想的に圧下(上方向へ移動)させるための固定が不足し、思うような移動が得られない

といった「力のコントロール」に起因する課題がありました。


歯根から動かす“歯体移動”を可能に

アンカースクリューを固定源として活用することで、

  • 歯根から平行に動かす「歯体移動」

  • 歯を上方向へ移動させる「圧下」

といった歯の移動がシンプルなメカニクスで可能になり、

  • 口元の突出感をより自然に改善

  • ガミースマイルの治療をよりシンプルかつ効率的に実現

することができるようになりました。


「ミニインプラント」と呼ばれることもあります

歯科矯正用アンカースクリューはチタン製でできており、「ミニインプラント」と呼ばれることもあります。

しかし、歯を失った部分に埋入する一般的なインプラント治療(デンタルインプラント)とは、目的も構造もまったく異なります。

歯科矯正用アンカースクリュー デンタルインプラント
歯を動かすための固定源 失った歯を補う人工歯根
一時的に使用し、治療後は撤去 長期的に使用
小型でシンプルな構造 人工歯を支える構造体

名称が似ているため混同されることがありますが、用途や役割は大きく異なりますのでご安心ください。

歯科矯正用アンカースクリュー

アンカースクリューの清掃方法

歯科矯正用アンカースクリューを長期間安定して使用するためには、適切なセルフケアが重要です。

■ 歯ブラシの当て方にご注意ください

意外に思われるかもしれませんが、通常の歯ブラシや電動歯ブラシでアンカースクリューに毎日強く当て続けると、緩みや脱落の原因になることがあります。

アンカー周囲は、

  • ゴシゴシ磨くのではなく、やさしく「なでるように」清掃する

ことが大切です。

また、クロルヘキシジンなどの殺菌成分を含むうがい薬を併用し、周囲の衛生状態を良好に保つことをおすすめしています。


■ お食事の際の注意点

アンカースクリューの露出部分に強い力が加わると、脱落の原因となることがあります。

特に、

  • 大きくて硬い食べ物

  • かじる動作で強い力がかかる食品

は注意が必要です。

できるだけ小さく切ってからお召し上がりいただくことで、不要な負担を避けることができます。

アンカースクリューは一時的に使用する装置ですが、治療をスムーズに進めるための重要な固定源です。正しいケアを行い、安定した状態を維持していきましょう。

歯科矯正用アンカースクリューの痛みについて

アンカースクリューを設置する際の痛みについて、不安に感じられる方もいらっしゃいます。実際には、局所麻酔を行うため、強い痛みを感じることはあまりありません。


■ 植立(設置)時の痛み

アンカースクリューを設置する際は、

  1. 表面麻酔を塗布

  2. その後に局所麻酔を実施

という手順で行います。

十分に麻酔が効いた状態で処置を行うため、設置中の痛みはあまりありません。

麻酔が切れた後に、軽い鈍痛や違和感が出ることがありますので、念のため痛み止めを処方しています。


■ 治療中の痛み

矯正治療中にアンカースクリューへ矯正力をかけたことが原因で、設置部位が強く痛むことは通常ありません。

万が一、違和感や痛みが続く場合には速やかにご相談ください。


■ 撤去時の痛み

アンカースクリューは治療終了後に撤去します。

多くの場合、局所麻酔を行わずに取り外すことが可能です。専用のドライバーを逆回転させて除去しますが、その際にわずかな痛みや圧迫感を感じることがあります。

もし痛みを感じる場合には、必要に応じて表面麻酔や局所麻酔を追加し、できるだけ負担の少ない方法で対応いたします。


■ 撤去後について

撤去後にできた小さな穴は、時間の経過とともに自然に閉じていきます。通常、特別な処置は必要ありません。

破折・動揺・脱落について

歯科矯正用アンカースクリューは、矯正治療において有効な固定源ですが、医療行為である以上、一定のリスクが存在します。

アンカースクリュー植立時の平均成功率は約86.3%と報告されており、まれに破折や脱落が起こる可能性があります。


■ 植立時の破折・脱落

設置時にスクリューが破折したり、骨質などの要因でどうしても十分な安定が得られない場合には、

  • 植立位置の変更

  • サイズや種類の変更

  • 従来の矯正方法への切り替え

など、状況に応じた適切な対応を行います。


■ 治療中の動揺

植立後も、

  • 感染

  • 歯ブラシ等による振動

  • 骨の状態

などの複数の要因により、アンカースクリューが動揺することがあります。

動揺が軽度であれば経過観察とする場合もありますが、動揺が大きい場合には一度撤去し、状態を確認したうえで再度植立を行います。

アンカースクリューは一時的な装置であり、万が一トラブルが生じた場合でも適切に対処することが可能です。

※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。

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