前歯に隙間があるいわゆる”すきっ歯”は見た目や発音に悪影響があります。すきっぱは小児だけでなく成人でも見られます。
多くは矯正治療で自分の歯を動かしてすべて自分の歯で治しますが、生まれつき歯が小さい場合はセラミックやレジンなどでサイズを大きくすることもあります。
小児期の歯の生え変わり時は前歯はハの字に斜めに生えてくるため隙間があるのが正常ですが、異常な隙間もあります。
以下に前歯に隙間ができる主な原因について述べます。
1.前歯が突出している
2.爪を縦に入れて咬む癖がある(または過去にあった)
3.舌の前歯を押す力が強い
4.生まれつき歯が小さい/歯が無い
5.過剰歯や上唇小帯(唇と結合しているひだ)がある
6.重度の過蓋咬合でかみ合わせが深く下の前歯で上の前歯の裏の歯茎を突き上げている
前歯の隙間の矯正治療
すきっぱの矯正歯科治療について先ほどの原因ごとに述べます。
1.前歯が出ている場合
上顎前歯が前に出すぎていると前歯に隙間が現れてきます。前歯を引っ込めて治す矯正治療を行って前歯を後退させると隙間が閉じてきます。
2.悪い習慣はやめる
爪を噛む癖など歯並びにとって悪い習癖は気づいたらやめるよう注意したり努力します。特に小児の場合には悪習癖をやめることで自然に治っていく場合があります。
3.舌圧や舌の位置に異常がある
歯列は舌と唇・頬の筋肉のバランスが取れた位置に徐々に移動してきます。このため舌で押す力が大きい場合にはその範囲だけ前に押されることになり隙間が出てきます。舌の正常な位置のトレーニングを小児期から行って正常な舌位と鼻呼吸を確立することが歯列や顎の成長面から非常に大切です。
4.生まれつき歯が小さい場合
生まれつき歯のサイズが小さめだったり先天的に永久歯が生えてこない場合にはレジンやセラミックで歯のサイズを本来のサイズまで大きくしながら矯正治療をすることが多いです。
5.過剰歯・上唇小帯が原因となっている場合
上顎の前歯の間に過剰な歯が埋まっているため正中に大きな隙間が現れることがあります。また、唇から歯と歯の間にひだ(上唇小帯)が伸びすぎている場合にも隙間が現れます。レントゲンや写真などから判断し過剰歯の抜歯や上唇小帯を短くする処置が必要になります。
6.下の前歯で突き上げている場合
重度の過蓋咬合で下の前歯が上の前歯の裏の歯茎に当たって上顎前歯を突き上げてしまっている場合には上顎前歯がかなり前に突出し、隙間が空きます。この場合の矯正治療はワイヤーをかけてかみ合わせを浅くしながら突出した上顎前歯を後退させることです。過蓋咬合の患者さんの多くは噛み応えのある食べ物が好きな場合が多いです。よく噛むのはいいのですがガムやグミなどを噛みすぎると噛む力が強すぎて自分の奥歯をめり込ませるためどんどん噛み合わせが深くなって過蓋咬合になっていきます。後戻りにも関連するので、私は過蓋咬合の患者さんには必ず食事の指導も行います。スルメやグミなど噛みごたえのある食べ物をやめて再び過蓋咬合にならないよう柔らかい食事に変えながら矯正治療をすることでより良い結果が得られます。
小児期のすきっ歯について
お子様の前歯に隙間が出来ているからと言って必ずしも問題があるわけではありません。
子供の前歯は外側に向かってハの字に斜めに生えてくるのが正常なので生え変わりの時期に隙間ができるのが正常です。この時期の歯並びは醜いアヒルの子の時期(ugly duckling stage)と呼ばれ、後から歯が生えてくるにしたがって自然と隙間が閉じていくという例えです。
小児期に注意すべき大きな隙間
通常は歯が生えそろうに従って自然と閉じてきますが、以下のような原因から前歯に隙間がみられる場合には注意が必要です。
過剰歯がある
大人の前歯が生えてくる6歳ごろ上顎正中に非常に大きな隙間がある場合、過剰な歯が歯と歯の間(正中)の骨の中に埋まっていることがあります。レントゲンを撮ることでしかわかりませんが、過剰歯がある場合には過剰歯は抜歯しなければなりません。
上唇小帯が伸びすぎている
上唇の真ん中から歯茎に伸びている繊維性のヒダを上唇小帯といいます。このヒダが伸びすぎて歯と歯の間に入り込んでしまうと大きな隙間が現れます。子供の上唇をめくってみて上唇小帯が歯茎まで伸びて歯と歯の間に入り込んでいるようならその可能性があります。この場合には伸びすぎた繊維性のヒダを切除し短くします。
歯が小さい/欠如している
生まれつき歯が小さかったり永久歯が欠如している子供にもスペースができます。また、日本人には少ないですが歯よりも顎のサイズが大きい場合にも隙間が出来やすいです。※日本人は空隙歯列になるより叢生になる方の方が圧倒的に多いです。
矯正治療単独でも歯を動かして隙間を閉じることも出来ますが、そのまま無理に閉じると前歯のサイズのバランスが悪くて見た目が気になったり咬み合わせの問題が大きい場合もあります。この場合には矯正治療中や治療後に隙間にレジンやセラミックなどで本来のサイズに戻しながら治療を行います。
前歯の傾斜
子供の前歯が前に傾斜している場合にも隙間が出来ます。原因には様々あり、下唇を上と下の前歯の間に入れて噛む癖や舌が前歯を押し出してしまうことが考えられます。小児の場合、まずは舌の位置を正常にし唇の力を鍛え傾斜した前歯を立て直すことが必要ですので舌や唇の筋肉を正常にするためのトレーニング(筋機能訓練)を小児矯正治療の一環として行います。
咬み合わせが非常に深い過蓋咬合(ディープバイト)の場合にも下の前歯が上の前歯を突き上げるため出っ歯になることがあります。このような過蓋咬合の方はよく噛んで食べる習慣がありグミやスルメなど噛み応えのある食べ物を好むため咬む力が非常に強く咬筋(エラ)が発達し咬むたびに自分で自分の奥歯をめり込ませるため、結果として下の前歯が上の前歯の裏を突き上げていきます。過蓋咬合の患者さんはグミやガムなど噛み応えのある食べ物が好きなことが多いので食事指導を行ってこれ以上悪くならないよう指導します。
すきっ歯の矯正治療例(成人)1
すきっ歯になる原因にはさまざまありますが、ここで紹介する治療症例は舌が歯を押す力に原因があるタイプです。
上顎前歯にも少し隙間がありますが下の左側の前歯部に明らかな隙間が確認できます。この部位に舌が偏って強く当たっているため内側から押し出す力が日常的に働いており前歯が前方に傾斜して隙間が出来ています。そのためまず舌の正常な位置を教えて舌の前歯への接触範囲の偏りを無くすように指導します。正常な舌位の指導とともにワイヤーと装置を装着し歯を動かして隙間を閉じていきます。
術前(ビフォー)
術後(アフター)
【本症例の概要と治療法、リスク、期間、料金について】
20代の患者さんです。上下の前歯部に隙間が空いていることを主訴に来院。非抜歯、表側矯正装置にて治療を行った。下顎前歯部に軽度ながら歯と歯の間に隙間があります。表側矯正でパワーチェーンをかけて治療を行いました。
矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置によっては発音に影響が出る、食事に制限が入る等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:平均約100万円 詳しくは https://facetalk.jp/treatment-costs/
期間1年半~2年程度
小児の前歯に隙間がある症例
小児期に隙間があるのは正常ですが、本症例の10代の患者さんの場合は上唇小帯というヒダが歯と歯の間の歯茎にまで過剰に伸びているために真ん中に隙間ができてしまっています。
矯正治療はまず上唇小帯を切除します。そのあと拡大床を夜間装着し装置に埋め込んでいるバネで前歯の隙間を閉じて経過観察しました。一部前歯が反対咬合になっているのでそれも顎の成長に悪影響を及ぼすため治療しました。
【本症例の概要と治療法、リスク、期間、料金について】
10代の患者さんです。上顎前歯部に大きな隙間があることと前歯反対咬合を主訴に来院されました。上唇小帯が過剰に伸びていたためそれを切除し、取り外し式の拡大装置を夜間使用させました。同時に、装置に埋め込んだバネで前歯反対咬合ならびに正中離開を改善しながら成長観察と口腔内衛生・生え代わりを管理しました。
矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、装置によっては発音に影響が出る、食事に制限が入る等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:小児矯正として平均約40万円 詳しくは https://facetalk.jp/treatment-costs/
期間:小児矯正として5年程度
※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。