小さな歯の悩みも矯正治療で解決:矮小歯に対するアプローチ

上顎側切歯(2番)矮小歯

上顎側切歯(2番)や下顎の第2小臼歯(5番)などの歯は親不知(8番)も含め人間の進化の過程で退化傾向のある歯で、生まれつき初めから永久歯が無いこともあります。 あるいは生えていても2番などは、”とんがりコーン”のように尖っていて非常に小さな歯として生えていることも多いです。これを「矮小歯」と呼びます。

矮小歯を残してラミネートべニア

先生の治療方針によって違いますが、僕が矮小歯の患者さんを矯正治療する場合は、歯根が正常範囲内であれば矮小歯でも残してラミネートべニアで修復して使う方向で治療プランを組みます。その理由として、前歯6本は見た目、機能共に他の歯で代えがたい形態をしていることがあります。

欠損した2番(側切歯)がある場合の治療プラン:選択肢と注意点

もし、2番が先天欠如して生まれつき永久歯がない場合、僕なら、治療は2パターンの治療プランを示します。一つは2番のスペースにとなりの犬歯(3番)を移動させ、次いで4番を3番の代わりにすべく移動させるプランです。このプランでは、術後には全部自分の歯で噛めることがメリットですが、デメリットは、見た目に明らかに前歯6本の歯の形態が異なるため笑って歯を見せた時に少々不格好になることと、3番はもちろん、特に4番は舌側咬頭を削って犬歯に似せなくてはならないため、かなり歯を削る必要があることです。

もう一つの治療プランは先天欠如している2番(側切歯)を人工歯で補綴することです。普通の歯医者さんはブリッジあるいはインプラントを勧めてくると思いますが、僕は健康な歯を削りたくないので、第一選択として”接着ブリッジ”による補綴治療で2番のスペースを埋めようとします。接着ブリッジは普通のブリッジとは全く異なることに注意してください。接着ブリッジは近年の接着技術の向上を利用し、通常のブリッジのように歯を”とんがりコーン”のように健康な歯を大きく削らなくても済む技術です。つまりブリッジが外れないようにするために、歯を大きく削って機械的維持力に頼るのではなく、接着技術によって接着力に頼るブリッジになります。

矮小歯の矯正治療の実際の症例

矯正歯科治療を行って歯根の平行性を整えてから矮小歯をラミネートべニアで修復した症例

上顎側切歯(2番)矮小歯

いわゆる「クイック矯正」と呼ばれる歯を削ってセラミックで歯並びを変える審美歯科治療がありますが、矯正治療で歯根の位置をある程度改善する前にいきなり歯を削って被せ物を作ると歯根が不正な位置にあるためセラミックの差し歯と歯根の方向が異常な角度が付いて歯茎の不自然さが残りやすいことや力学的強度が落ちます。本症例は上顎側切歯(2番)が生まれつき小さな矮小歯でしたので、 矯正治療を行ってある程度歯根を平行に整えてから矮小歯をセラミックのラミネートべニアで修復しました。僕の治療プランはなるべく矮小歯は残してラミネートべニアなどの補綴治療で抜歯せずに使います。術後にラミネートべニアを張り付けるのに十分なスペースを残して矯正治療を終えました。

僕が矮小歯の補綴治療にラミネートべニアを選ぶ理由は歯を削る量が少ないことです。一般に、矯正歯科医であれば天然歯を残そうとしますので、ラミネートべニアは矯正歯科医にとっても魅力的な補綴治療なのです。

ラミネートべニアのシュミレーション
ラミネートべニアを模型上ではめてみた画像
ラミネートべニアそのもの
矯正治療後の矮小歯にラミネートべニアで整えた画像

矯正治療後に矮小歯をラミネートべニアで修復する際には、まず模型上でシュミレーションとしてワックスアップをして、患者さんと形態を相談します。それでOKであれば、職人さんに依頼して色調を指定してセラミックあるいはジルコニアを併用して人工歯を製作してもらって口腔内に接着します。このようないわゆる「審美歯科」の補綴治療で知っておいてほしいのは、セラミックでできたラミネートべニアと言えども天然歯ではないので天然歯と全く同じにすることは難しいこと、特に光の当たり具合による暗さ(シェード)が天然歯とは異なるということです。歯を修復する際に,セラミックやジルコニアを僕は多用しますが、やはり、天然歯が一番綺麗で丈夫だと思います。

歯並び咬み合わせを矯正治療してから矮小歯をラミネートべニアで修復した症例

矮小歯ラミネートべニア修復矯正治療

40代の患者さんです。八重歯、過蓋咬合を主訴に来院されましたが、右上2番が矮小歯であったため矯正治療後にラミネートべニアで歯の形を整える治療プランを立てました。術後は歯並び、噛み合わせも良くなり、矮小歯も切削量が最小で歯根が整った後にラミネートべニアで修復を行い患者さんは大変満足されていました。非抜歯で表側装置を用いて治療を行いました。

矯正治療のリスク:歯磨きがしにくくなる、歯根吸収が起きうる、表側装置が頬に擦れる、食事に制限が入る等 詳しくは https://facetalk.jp/risk-orthodontic-tx/
費用:表側の目立たない装置 平均約100万円 詳しくはhttps://facetalk.jp/treatment-costs/
期間:1年半程度

※矯正歯科治療は公的健康保険適用外の自費(自由)診療です。

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