舌の位置が異常だと顎の歪みの原因になる
人間の大切な機能である呼吸とも関連が深い舌の位置についてレクチャーしていきます。この記事ではまず舌の先端の位置についてです。舌が正常な位置にないと気道を狭めてしまうので呼吸がしづらくなってきます。矯正歯科治療で良く見るのは舌が下に落ち込んでいる状態です。これを専門用語で低位舌といいますが、低位舌ですと本来上に上がっている分の舌の体積が気道の方に落ち込んでいますので気道が狭くなり苦しくなるわけです。苦しくなると下の顎を前に出してなんとか呼吸しようとしますが、その結果、受け口や下の顎が前に突出した顔立ちとなります。
また、舌は内側から圧力を加え上顎歯列を広げるように押しています。ですので舌が低位であると上顎歯列が狭くなり叢生が現れやすくなります。このような低位舌は矯正歯科を訪れる患者さんには非常に多いです。矯正歯科でセファロレントゲンといって頭のレントゲンを1枚取ってみると舌の位置がわかります。セファロでは舌の他にも気道の広さや舌骨の位置もわかります。検査で舌や気道に異常があれば舌位の指導はもちろん、なるべく気道を広げるような治療を考慮します。
舌の正常な位置
それでは前置きが長くなりましたが舌の先端の正常な位置についてみていきましょう。鏡を見ながら確認してみると理解が深まると思います。舌の先端は上顎の前歯の付け根に当てながら舌全体は天井(口蓋)にくっついている状態が正しい位置なのです。当然、口ではなく鼻で呼吸してください。この正常な舌の先端の位置を”スポット”といい、図の白丸の位置になります。上に述べた低位舌の人は上顎ではなく下顎の前歯の裏にまで落ち込んでいます。それをぐっと持ち上げる訓練をしていくわけです。舌は筋肉でできていますので最初は大変ですが、トレーニングで改善していきます。
このスポットに割り箸やストローを軽く5秒当てて離してからトレーニングすると感覚が残っているため舌の先端をスポットに置きやすくなります。そして先端をスポットに5秒維持する。これを5回繰り返します。これがスポット・ポジショントレーニングです。舌のトレーニングではまず、このように舌の先端の位置がスポットに当たっているかを確認して、その次に舌を上に持ち上げる筋トレを行います。舌も舌筋という筋肉でできていますので鍛えるためには筋トレが有効です。
低位舌を改善するトレーニング
それでは自分でできるトレーニングですので鏡を持って舌の位置を見ながらやってみてください。
- 舌の先端をスポットに当てたまま、舌全体を上に持ち上げ口蓋に吸い付くように押し当てるような動作をします。
- 図のように舌の裏側にある舌小帯が伸びている状態を5秒維持する。
- ただ外すのではなくポンッと音を立ててはじくように舌を口蓋から離す。
- これを10回繰り返す。
このトレーニングをポッピングトレーニングと呼びます。 まれに舌小帯が短いため舌を持ち挙げられない患者さんもいます。舌を前に出したときに正面から見てハート型に変形する場合には舌小帯を切って舌が自由に動けるようにする手術をしなければなりません。手術後1週間で舌のトレーニングを再開して半年もたつころには正常な人との区別は付かなくなってきます。このポッピングトレーニングで舌が口蓋に密着できるようになると、気道が広がるので全身に酸素がいきわたり、いままでいびきや集中力が出にくかったという症状も改善されていきます。
ガムを使った舌のトレーニング法
ポッピングトレーニングよりも簡便な舌トレーニング法としてガムを使った筋トレがあります。タブレットガムを噛んである程度柔らかくしたら舌の上に置いてください。舌の先端をスポットにつけながらガムを天井(口蓋)に押し付けます。先ほども言いましたように舌は舌筋という筋肉でできていますので口蓋に押し付けることが筋トレになるのです。このガムを使ったトレーニング法は私が臨床でもよく指導しています。